・・・こういう点では、下町の素人の芝居好きの劇評のほうがかえって前述のごとき著名なインテリゲンチアの映画批評家の主観的概念的評論よりもはるかに啓発的なことがありうるようである。 こんな不満をいだいていたのであったが、近ごろは立派な有益な批評を・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(4[#「4」はローマ数字、1-13-24])」
・・・で、日本の近代社会にのこされている半封建性と、その影響をうけているインテリゲンチアの精神構成をとりあげていることは正しかった。治安維持法の犠牲となった作家たちが、転向の動機を、めいめいの個人的性格の問題、インテリゲンチアと勤労大衆との間にあ・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十巻)」
・・・ 文学は、ブルジョア・インテリゲンチアの革命運動のはじまりから、多くその影響のもとに生れた。 では、古典ロシア革命文学の中に、どんな傑出した階級的アレゴリーがあったか? ほとんどない。 ソヴェト文学の中にあるか? ない。・・・ 宮本百合子 「新たなプロレタリア文学」
・・・なぜならば、ブルジョア・インテリゲンチア作家としての発展の必然としてプロレタリア文学運動に参加した自分は、すでに質において真の作家としての発展の可能性をとらえた。また、過去のすべての文化的蓄積を最も革命的に利用し得るよう自身を鍛え洗われたも・・・ 宮本百合子 「一連の非プロレタリア的作品」
・・・ カターエフの作品とくらべて特に面白いのは、一方がいかにもインテリゲンチアの作家によってかかれた戯曲らしく整っていて、同時に農民の描写が観念的なのに対して「憤怒」の女小作人、若い農夫、村の女教員さえ、いかにも生きいき現実的にとらえられて・・・ 宮本百合子 「インターナショナルとともに」
・・・的社会の相の不安につれて、いわゆるインテリゲンチアに対する嘲弄が文学その他の文化の面に現れていることである。 歴史はわれわれに実例を以て真に多数者の利害の上に立った文化を建設して行くためには、その基礎となる生産関係の解決問題と共に、進歩・・・ 宮本百合子 「今日の文化の諸問題」
・・・いるヨシノとサダ子につれられて、二人の娘の気質の相異を理解しながら、読者は次第に北国へ向い、やがて峯子に出会ってA村に入ると、そこには、貧農の息子でのちに急進的に行動する清司、動揺する地方の人道主義的インテリゲンチアである小学教師の木村、窮・・・ 宮本百合子 「作家への課題」
・・・っても、他の生産部門においてと同様、多数の新しい労働者、集団農場員幹部をもつようになったこと、労農文学通信員からおびただしい新進作家が輩出して来たこと、及び、スターリンが演説の中でもいっている通り、旧インテリゲンチア、作家団でいえば「鍛冶屋・・・ 宮本百合子 「社会主義リアリズムの問題について」
・・・例えば夏目漱石の小説ですが、その主人公は、インテリゲンチアですが、本当の親でない親をもった青年が、いろいろな苦しみの中にもだえているし、「行人」のように自分を愛するのか愛さないのかわからない、ちっとも積極的な感情表現をしない妻をもったインテ・・・ 宮本百合子 「社会と人間の成長」
・・・ 現代ヒューマニズムは日本のインテリゲンチアがマルクス主義に絶望し、それと訣別したところにその出発があるのではなく、マルクス主義をも含めて一切の人間の精神の活動や行為、人間的独立が、虐げられ踏みにじられていたところに、そのノッピキならぬ・・・ 宮本百合子 「十月の文芸時評」
出典:青空文庫