・・・新聞を読むひまのないほど、わたしたちの生活を追いつめている資本主義社会のひどい現象を助長することになる。インフレーション政策もけっこうという立場の新聞を支持するとき、主婦たちは、高物価反対という自分たちの声を封じることになるのである。〔一九・・・ 宮本百合子 「主婦と新聞」
・・・二三ヵ月に物価がとび上るインフレーションは、一人一人の経済を破滅させているとともに、婦人の社会的生活、家事の心痛を未曾有に増大させている。先ず、生きなければならない。生きてこその文学である。文学は逆に云えば、最も痛烈な人間的生の発現である。・・・ 宮本百合子 「女性の歴史」
・・・今日では、単行本の売れゆきは激しくて、インフレーションをおこしている一方に、そもそも文学とはどういうものなのだろうかという一層根本に立ち入った問いを人々の心によびさまして、人生と文学との課題が甦って来ているのである。 文学が広汎な意味で・・・ 宮本百合子 「人生の共感」
・・・ 何故なら三年の間に最も重要なこの生活問題は解決されなかった。 インフレーションはとめどがなくて、千八百円ベースは、現実の生活で規準にも何にもならなくなって来た。そこで、春さむい三月下旬のいま、新しく二千九百二十円の水準に向って、全・・・ 宮本百合子 「正義の花の環」
・・・いかがわしい出版社が、まったくインフレーションにともなう現象としてどんどんできて、妙な雑誌がやたらにできて、それらがみんな紙を買い煽る。ですから、日本の民主主義文学のために意義をもつ『新日本文学』は編集責任者たちにたいへんな努力と心痛とをさ・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
・・・しかし、同じ戦敗のドイツの中でも、そしてあの世界史的なドイツのインフレーションの中でも、第一次大戦によって軍需成金となった新興財閥は存在した。それら一握りの新マーク階級の人々は彼等の特権にとって有利でない人民的な生産様式にドイツの社会が進化・・・ 宮本百合子 「それらの国々でも」
・・・ インフレーションは勤労者の生活をおしつけていると同じように、民主主義文学における活動家、作家の生活をおしつけ、文学の発展を妨げています。一家を背負った民主主義作家が、生活のために自身の発展と生長のためにはむしろよくないほど原稿を書いて・・・ 宮本百合子 「討論に即しての感想」
出版にインフレーションという流行ことばが結びつけて云われたことは、おそらく明治以来例のないことだったのではなかろうか。ところがこの一二年来は、インフレ出版という言葉が出来た。そしてこの言葉は、本がびっくりするほど売れるとい・・・ 宮本百合子 「日本文化のために」
・・・今日長いおそろしい戦争の結果これ程の未亡人と、浮浪児が何んの人間らしい生活へ進む可能性も国家から保証されないで、おそろしいインフレーションの街に放り出されているとき、平等の親権は、何をなし得るだろう。男女平等の財産権が、どこにその基礎になる・・・ 宮本百合子 「人間の結婚」
・・・戦敗後のインフレーションと食糧危機に当って、その国の無産婦女子の生活が惨憺たるものにならなかった例は、ほとんど皆無であることを。 さらに、世界の現実は、はっきりと示している。一般失業問題が深刻化して来ると、その中でも女子失業者の日々は実・・・ 宮本百合子 「人間の道義」
出典:青空文庫