仏蘭西現代の詩壇に最も幽暗典雅の風格を示す彼の「夢と影との詩人」アンリイ・ド・レニエエは、近世的都市の喧騒から逃れて路易大王が覇業の跡なるヴェルサイユの旧苑にさまよい、『噴水の都』La Cit des Eaux と題する一巻の詩集を著・・・ 永井荷風 「霊廟」
・・・ただその頃私は純粋経験という考を中心として考えていたので、 Sur les donnes immdiates de la conscience.[『意識に直接与えられているものについての試論』]という書名に誘われたのである。しかし最初にベル・・・ 西田幾多郎 「フランス哲学についての感想」
・・・Rue de la Faisanderie の大道は広々と目の下に見えていて、人通りは少い。ロンドンの上流社会の住んでいる市区によくこんな立派な、幅の広い町があるが、ここの通りはそれに似ている。 ピエエル・オオビュルナンは良久しく物を案・・・ 著:プレヴォーマルセル 訳:森鴎外 「田舎」
・・・ 石田は床の間の隅に立て掛けてある洋書の中から La Bruyre の性格という本を抽き出して、短い鋭い章を一つ読んではじっと考えて見る。又一つ読んではじっと考えて見る。五六章も読んだかと思うと本を措いた。 それから舶来の象牙紙と封・・・ 森鴎外 「鶏」
・・・ 学生は挨拶をして、ロダンの出した、腱の一本一本浮いている右の手を握った。La Danaide や Le Baiser や Le Penseur を作った手を握った。そして名刺入から、医学士久保田某と書いた名刺を出してわたした。 ロ・・・ 森鴎外 「花子」
出典:青空文庫