・・・ガス体の分子やエレクトロンの集団あるいは光束の集合場において各個部分の状態を論ぜんとしても普通の「時」を使う力学は役に立たなくなる場合がある。そういう場合にこのエントロピーのありがたみが始めて明白になって来るのである。 かように、エント・・・ 寺田寅彦 「時の観念とエントロピーならびにプロバビリティ」
・・・前世紀の末頃までは原子までで事が足りていたが、真空中放電の研究や放射能性物質の研究から更に原子の内部構造を考えなければならぬ破目になって、ここにエレクトロンなるものが発見される事になった。今日ではほとんどこの電子の実在を疑う者はない。放射性・・・ 寺田寅彦 「物質とエネルギー」
・・・すなわちかりにここに微小な人間があって物質分子の間に立ち交じり原子内のエレクトロンの運動を目睹しているがその視力は分子距離以外に及ばぬと想像する。このような人間の力学が吾人のと同様であれば吾人の原子的現象の説明は比較的容易であろうが、実際素・・・ 寺田寅彦 「物理学と感覚」
出典:青空文庫