・・・これは私のエレメントである同じ宗教的情操の、世間にもまれた後の変容であって、私は『出家とその弟子』よりも進んでいると思っている。長さももっと大作だ。しかし、世間ではあまりこの作に注意しないのは残念千万だ。『出家とその弟子』は邦枝完二君の・・・ 倉田百三 「『出家とその弟子』の追憶」
・・・それにしてもこの作者のこの作品の中にどこかそういうエレメントが伏在していない限り、こういう見方の可能性を許すような作品が生まれることはないはずだとも言われはしないか。 世界じゅうでいくらかでも俳諧を理解する国民は、フランス人とロシア人で・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・ 五 幕末ものの映画をその組成要素に分解してみると、割合に少数なエレメントで大抵の用を便じていることが分かる。「密謀の集会」「大広間の評定」「道中の行列」これには大抵同じ土手や昭和国道がつかわれる。「花柳街の・・・ 寺田寅彦 「雑記帳より(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・この卑下、正直、芸術尊敬の三つのエレメントが抱和した結果はどうかと云うに、まあ、こんな事を考える様になったんだ――将来は知らず、当時の自分が文壇に立つなどは僭越至極、芸術を辱しむる所以である。正直の理想にも叶って居らん……と思うものの、また・・・ 二葉亭四迷 「予が半生の懺悔」
・・・うことがいわれて、何の総熱量は何と何との総熱量と同量であるから、これとあれとは人体に同じ作用をおよぼす、というようによく新聞などに出るけれど、科学の進歩は私たちにカロリーとともに、そのカロリーをつくるエレメントのことを教えている。ヴィタミン・・・ 宮本百合子 「私の感想」
出典:青空文庫