・・・ふと王子のお顔をあおいで見ますと王子はやさしいにこやかな笑みを浮かべてオパールというとうとい石のひとみで燕をながめておいでになりました。燕はふと身をすりよせて、「今私をおよびになったのはあなたでございますか」 と聞いてみますと王子は・・・ 有島武郎 「燕と王子」
・・・七つ位の時、父から貰ったオパールの三つついた指環と、この指環と、二つが、きょう私のもつ指環のすべてとなっている。 夫人と私との間に、女同士らしい話がとり交わされるようになり、私に対してもっていて下さる関心の並々でないねうちも知ったのは、・・・ 宮本百合子 「白藤」
・・・ お天気のいい朝鸛の鳥が小さい私をオパール色の宮殿から母さんの膝につれて来たんです。 それからあったかい日光と、よい空気と、甘いお乳で、やきたてのお菓子の様に育って、手足がたくましく真直になった時、私は跳る様にして、今日まで続いて居・・・ 宮本百合子 「旅人(一幕)」
・・・ 篤はその人の顔を思い出そうとする様な目差しをしながら云った、そしてまるで気を変えた様に千世子の指のオパールを見ながら声の練習でもする様に気をつけて節まわしよくするすると話し出した。「此頃体の具合はどうなんです。 少し眼・・・ 宮本百合子 「千世子(三)」
出典:青空文庫