・・・私は日本の一流の映画家、音楽家、俳人が力を合わせて、西洋人に先鞭をつけられないうちに、一日も早くオリジナルで芸術的でしかも大衆的におもしろい俳諧連句的映画の創作に着手する事を切望するものである。・・・ 寺田寅彦 「音楽的映画としての「ラヴ・ミ・トゥナイト」」
・・・ 大学を卒業して大学院に入り、そうして自分の研究題目についていわゆるオリジナル・リサーチを始めてほんとうの科学生活に入りはじめたころに、偶然な機会でまた同時に文学的創作の初歩のようなものを体験するような回り合わせになった。そのころの自分・・・ 寺田寅彦 「科学と文学」
・・・たとえば帽子の代わりにキャベツをかぶって銀座を散歩した男があるとすれば、これは確かにオリジナルな意匠としての記録に価する。しかしこのレコードは決して破られない。なんとならば、再びキャベツを用いたのでは、キャベツを用いたという質的レコードは破・・・ 寺田寅彦 「記録狂時代」
・・・ なんといってもこの本でいちばんおもしろいものはやはりこの原稿の複製写真である。オリジナルは児童用の粗末な藁紙ノートブックに当時丸善で売っていた舶来の青黒インキで書いたものだそうであるが、それが変色してセピアがかった墨色になっている。そ・・・ 寺田寅彦 「小泉八雲秘稿画本「妖魔詩話」」
・・・今日でこそ珍しくないであろうが、当時ではかなりオリジナルな面白い試みであったと思われる。船舶工学方面の研究では、波浪による船のヨーイングに関するもの、同じくドリフトに関するもの、いずれも理論的計算のみならず、簡単な模型実験を行ってその結果を・・・ 寺田寅彦 「工学博士末広恭二君」
・・・ 勿論、馬琴自身のオリジナルな観察も少なくはないであろうが、全体として見るときは彼の著書には強烈な「書庫の匂い」がある。その結果として、あらゆる描写記載にリアルな、生ま生ましい実感を求めることが困難である。馬琴自身の自嘲の辞と思われる文・・・ 寺田寅彦 「西鶴と科学」
・・・一九三三年のオリジナルな鯛茶の喰い方なのである。 五 幕末ものの映画をその組成要素に分解してみると、割合に少数なエレメントで大抵の用を便じていることが分かる。「密謀の集会」「大広間の評定」「道中の行列」これに・・・ 寺田寅彦 「雑記帳より(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・ 明治二十年代の片田舎での出来事として考えるときに、この杏仁水の饗応がはなはだオリジナルであり、ハイカラな現象であったような気がする。 大学在学中に、学生のために無料診察を引受けていたいわゆる校医にK氏が居た。いたずら好きの学生達は・・・ 寺田寅彦 「さまよえるユダヤ人の手記より」
近ごろある地方の小学校の先生たちが児童赤化の目的で日本固有のおとぎ話にいろいろ珍しいオリジナルな解釈を付加して教授したということが新聞紙上で報ぜられた。詳細な事実は確かでないが、なんでもさるかに合戦の話に出て来るさるが資本・・・ 寺田寅彦 「さるかに合戦と桃太郎」
・・・ それから、また労働争議というはなはだオリジナルでない運動の中からこういう個性的にオリジナルなものが出現して喝采を博したのもまた一つの不思議な現象と言わなければならない。 金曜日 総理大臣が乱暴な若者に狙撃された・・・ 寺田寅彦 「時事雑感」
出典:青空文庫