・・・ 彼はまず、カレーライスを食い、天丼を食べた。そして、一寸考えて、オムライスを注文した。 やがて、それを平げると、暫らく水を飲んでいたが、ふと給仕をよんで、再びカレーライスを注文した。十分後にはにぎり寿司を頬張っていた。 私は彼・・・ 織田作之助 「大阪の憂鬱」
・・・それには驚かなかったが、バラックの中で白米のカレーライスを売っているのには驚いた。日本へ帰れば白米なぞ食べられぬと諦めていたし、日本人はみな藷ばかり食べていると聴いて帰ったのに、バラックで白米の飯を売っているとはまるで嘘のようであった。値を・・・ 織田作之助 「世相」
・・・食事中に箸を置いて、おもむろに煙草を吸うというのは、まだ生易しい方で、カレーライスなどの場合、右手にスプーン、左手に煙草、右手と左手をかわるがわる口へ持って行った。食前、食間は勿論である。入浴する時は、まず新しい煙草に火をつけるほか、耳にも・・・ 織田作之助 「中毒」
・・・ ところが、あてもなく闇市場を歩いていると、パンを売っているばかりか、食堂の飾窓にはカレーライスの見本ももこの物語を一まずここで終ることにする。豹吉やお加代や亀吉がやがて更生して行くだろう経過、豹吉とお加代、そして雪子との関係、小沢と道・・・ 織田作之助 「夜光虫」
・・・皇太子が、唯一の御馳走は、カレーライスだと思っているということについて、人々は小生意気で早熟な闇成金の息子たちに対するのとはちがった、ほほ笑みをもらすのである。皇后が動物園へ行って、おもしろそうに笑って象を見ている、その姿に、世間を知らない・・・ 宮本百合子 「戦争はわたしたちからすべてを奪う」
出典:青空文庫