・・・私は武装蜂起に賛成した。ギロチンの無い革命は意味が無い。 しかし、私は賤民でなかった。ギロチンにかかる役のほうであった。私は十九歳の、高等学校の生徒であった。クラスでは私ひとり、目立って華美な服装をしていた。いよいよこれは死ぬより他は無・・・ 太宰治 「苦悩の年鑑」
・・・然し、其は軈て彼等のギロチンになりますでしょう。若い女性、従来若いと云えば、直ちに幼稚な頭脳、浅い判断と云う追従語によって形容された青年は、少くとも、生命に満ちた心其もので現代の不安を感じて居ります。魂を強め、生活に力を与える暗示を得る事は・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
・・・パリでトルストイに一生忘られない戦慄を与えたのは娼婦のあでやかな流眄ではなくて、ギロチンにかけられた死刑囚の頭と胴とが別々に箱の中にころがり落ちる時の重い響きであった。トルストイは作家仲間と酒をのみ、ジプシーの歌をききながらも、ツルゲーネフ・・・ 宮本百合子 「ツルゲーネフの生きかた」
出典:青空文庫