・・・俺たちのような、物質的には無能力に近いグループのために尽くしてくれるその女の志は美しいものだった。奴はひそかにその弟の細君に恋をしていた。けれども定められた運命だからどうすることもできない。奴は苦しんだ。そしてその苦しみと無限の淋しみとを、・・・ 有島武郎 「ドモ又の死」
・・・自然、不良性を帯びた生徒たちのグループに近づいたが、彼等は一人残らず煙草を吸うことで、虚栄を張っていた。私はこのこそこそした虚栄をけちくさいと思った。だから、おれだけはお前らと違うぞというつもりで、卒業するまで煙草は吸わなかった。いいかえれ・・・ 織田作之助 「中毒」
・・・そして、兵営内に於ける組織を作りそれから、革命的な、サークルや、グループを組織化することに努めねばならぬ。 軍隊内における組織的活動、軍国主義と資本主義のためにする軍隊の使用に反対する啓蒙的な宣伝は、兵営に這入ろうとする革命的な青年たち・・・ 黒島伝治 「入営する青年たちは何をなすべきか」
・・・「だから、労働者グループは、いまじゃ青井君一人ぽっちですよ」 下宿の二階にあがると、古藤にかわって福原が説明している。浅川も、「印刷工組合は、小野が上京してから、かえってアナの影響がつよくなったようだナ」 などというのを、古・・・ 徳永直 「白い道」
・・・学生たちのグループが、こういう社会現実に対してもし商業新聞の社会面的にみるだけという態度でいるようなことがあれば、それらの人々のもっている進歩性というものは、生活の裏づけのうすい頭脳的なものであるということになります。現実の社会悪ととりくん・・・ 宮本百合子 「新しい抵抗について」
・・・旧いブルジョア文学にはあき足らず、しかし、無産派文学には共感のもてない小市民的要素のきつい若い作家たちが、新感覚派や新興文学派のグループにかたまった。 文学におけるリアリズムの歴史としてみれば、この時代から、日本のブルジョア・リアリズム・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第三巻)」
・・・ 真実の発展を自分たちに向って拒みつつあるブルジョア文学のひこばえとしてこの時期に発生したのが、横光利一その他の人々の新感覚派のグループであった。それぞれの権威で文壇を封鎖している旧いブルジョア文学にはあき足らず、さりとて無産階級の文学・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第六巻)」
・・・その点では兄も妹も別々で、まともな心持の若いものはかえって兄と妹とのグループをごっちゃにして外で遊ぶというようなことはしないらしい。 従って何か特別な社会環境にいる人でない限り、互の接触はたいへん稀れなことになり、友情という広汎な感情で・・・ 宮本百合子 「異性の友情」
・・・ので「どんな場合にでも呑気でいかん」ものなのだが、マア堪えてくれろといわんばかりに書いている。 彼の失敗した演説にもかかわらず、農村における力の高揚はむこうから組織をとらえに来る。「やま連」のグループが北村清吉を代表として部落委員会らし・・・ 宮本百合子 「一連の非プロレタリア的作品」
・・・現代の少壮と目されている作家等が、むきだしに十円会と金だかだけの呼び名で一定のレベルの経済生活と文壇生活とをしているグループの会を呼んでいるのは実に面白いと思う。 十円の金は十円の金で、どうでも使える。死金にもなり、悪銭にもなり、義捐金・・・ 宮本百合子 「「大人の文学」論の現実性」
出典:青空文庫