・・・そうかと思うと一方には、代がわりした『毎日新聞』の翌々日に載る沼南署名の訣別の辞のゲラ刷を封入した自筆の手紙を友人に配っている。何人に配ったか知らぬが、僅に数回の面識しかない浅い交際の私の許へまで遣したのを見るとかなり多数の知人に配ったらし・・・ 内田魯庵 「三十年前の島田沼南」
・・・目次のゲラをみると、これまでの既成文学史と同様に、写実主義時代、浪漫主義時代、自然主義時代と順を追って、プロレタリア文学、モダニズムとすすんでいる。こういうわけ方は、東京堂出版の「日本文学史」や改造社の「文学全集」でもやったことである。写実・・・ 宮本百合子 「「現代日本小説大系」刊行委員会への希望」
・・・女中達が考えのいかにも無さそうなゲラゲラ声をたてて笑って居る――そんな事はよけいに私を怒らせて、まるで今日だけ特別に私をからかうために出来て居るかと思われるほど並んで、揃いに揃って私の心を勝手におこらせたり、イライラさせたりして居る。まるで・・・ 宮本百合子 「つぼみ」
・・・ 編輯者の好意で、伏字なしのゲラが保存されていたことはほんとに嬉しかった。それによってここにおさめられている「広場」は、不自由ながらもあのころ書かれたままの表現にもどされている。〔一九五〇年二月〕・・・ 宮本百合子 「「広場」について」
出典:青空文庫