・・・小籠 「コム」は瘤、また小山。「コムコム」か。咥内 「カウンナイ」係蹄をかけて鹿を捕る沢。石狩にもこの地名あり。加江 は岩の割目。大河内 「ウーコッ」川の合流。甲殿 「コタン」は村。またマレイで「コタ」は町。またビルマ語・・・ 寺田寅彦 「土佐の地名」
・・・ 海は中どころだった。凪いでると云うんでもないし、暴化てる訳でもなかった。 三十分後に第三金時丸の舵手は、左に燈台を見た。 コムパスは、南西を指していた。ところが、そんな処に、島はない筈であった。 コーターマスターは、メーツ・・・ 葉山嘉樹 「労働者の居ない船」
・・・この社会的不安が肉体にあらわす精神障害を、一つの抑圧されたコムプレックスとしてフロイドは解明しようとした。当時でも、この方法は十分科学的ということはできない、精神現象の生物的性格に局限された扱いかたであった。しかし、フロイドの精神分析は何か・・・ 宮本百合子 「現代の主題」
・・・を組織した。コムソモールは生産部門の全線に自分たちを動員して、党外勤労者と集団的結束をかためた。然し勤労者の中には「十月」以後ソヴェト同盟で生産は生産のために行われているという羨むべき事実を理解しない「棒杭奴」もある。資本主義生産に奴隷とし・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・現代文学のさまざまなコムプレックスをどのように発展的にときほぐして、日本の人民の文学の歴史を世界史の中に意義あるものとさせうるだろうか。 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・クレムリンを中心に一寸がたついたコムパスで大きく描いた円みたいな環状線。これは外の並木通りで、絞りをずっと縮めてゆくともう一本やっぱりクレムリンを遠巻きにして円く――そう! これが内の並木通りである。 並木通新聞という言葉がある。・・・ 宮本百合子 「子供・子供・子供のモスクワ」
・・・不幸にして、その心理は、日本人民がファシズム権力にひしがれつづけて来た被抑圧的屈従の複雑なコムプレックスをふくんでいる。その心理的コムプレックスには率直にふれそこから解放されようとしないで、「文学理論」で饒舌に表現するよくない習慣ものこって・・・ 宮本百合子 「小林多喜二の今日における意義」
・・・って成長展開するかという前途多難な課題の内からみると、あの三通りのそれぞれ一風変った名の持主たちの出現と存在とは、さらに一歩を深めて、それぞれの作家がその精神のうちにもって生きている人及び作家としてのコムプレックスの相異にまで迫って、語られ・・・ 宮本百合子 「今日の文学の諸相」
・・・としてとった態度を思いかえすと、今になってはっきりしてくるいろいろな心理のコムプレックスがある。当時、国内国外呼応して発熱的に高まってきつつあったファシズムの暴力と圧力に対して、文化と教養に磨かれた精神はきわめて敏感であった。いつの時代でも・・・ 宮本百合子 「世紀の「分別」」
・・・という心理の主観的なコムプレックスに立てこもって意怙地であることに意味があるとする一つの傾向があります。『近代文学』を中心とする平野謙、荒正人その他の人々に共通な傾向だと思います。 どういう原因が、こういう複雑な心理を生んだのでしょう。・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
出典:青空文庫