・・・ 日本女は右手の受付へ行った。 ――百二十四番の室の許可証を下さい。 ゴム印をおし、番号を書いた紙片を貰って、さらにもう一枚ガラス戸をあけて、表階段をのぼって行った。 二階の壁に、絵入りのスモーリヌイ勤労者壁新聞が張り出して・・・ 宮本百合子 「スモーリヌイに翻る赤旗」
・・・裏に、文学報国会と紫のゴム印が捺されてある。封筒の中にはひろ子の小説をうつした原稿が入っていた。 見つかった書類と一緒に、ひろ子はその封筒をもち出した。そして、重吉の仕事が一段落ついたとき、「こういうものが出たわ」 その封筒を見・・・ 宮本百合子 「風知草」
・・・待っている人々と彼等との違いは、ただ彼等はちっともそれについて心配していないことと、呑気に立って喋舌っていて、相当頻繁にこそこそと入場券購入許可証とゴム印を捺した紙片をもって来る人を、出口から乗車フォームへ通してやっていることだけである。・・・ 宮本百合子 「みのりを豊かに」
出典:青空文庫