・・・フランス語の「サンス」 sens という語は他の国語に訳し難い意味を有っている。それは「センス」sense でもない、「ジン」 Sinnでもない。マールブランシュはいうまでもなく、デカルトにすらそれがあると思われる。しかし私はフランス哲学独・・・ 西田幾多郎 「フランス哲学についての感想」
・・・雑誌のモードは、山に海にと、闊達自由な服装の色どりをしめし、野外の風にふかれる肌の手入れを指導しているけれども、サンマー・タイムの四時から五時、ジープのかけすぎる交叉点を、信号につれて雑色の河のように家路に向って流れる無数の老若男女勤め人た・・・ 宮本百合子 「偽りのない文化を」
・・・ 二十二日 メキシコ アリゾナ 二十三日 L. A. 着、あの心持 San Gabriel を見物 二十四日 ドクターヒアスに呼ばれる。 二十五日 CC夫人ポーリンとワシントンに立つ。送る。 CCの・・・ 宮本百合子 「「黄銅時代」創作メモ」
・・・灰色と薄桃色と黒との諧調で独特に粋な感覚の世界をつくったマリー・ローランサン。しかし、ケーテ・コルヴィッツの存在はドイツの誇りであるばかりでなく、その生涯と労作とは、決してただ画才の豊かであった一人の婦人画家としての物語に尽しきれない。ケー・・・ 宮本百合子 「ケーテ・コルヴィッツの画業」
・・・というものを制作するのに、教師は決して誰それサン、作文を書きなさいとは命じない。めいめいが相談しあって、自分の一番得手な、やりたい技術でその仕事に参加する。或る子は一生懸命スターリンの論文をひっぱって論文を書く。或る子は絵でスケッチをやる。・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」
この間、『サン』を見ていたら、福島県のどこかの村の結婚式の写真が出ていた。昔ながらの角かくしをかぶって裾模様の式服を着た花嫁が、健康な農村の娘さんらしい膝のうずたかさでかしこまって坐っている。婿さんの方は、洋服姿で、これも・・・ 宮本百合子 「指紋」
・・・ アメリカへ行くとのぼせて、日本人に向っておかしなことをいう日本人は、冬のさなかにサン・グラスをつけて、フジヤマ・スプレンディッドと叫んだ田中絹代ばかりではない。池田蔵相もだいぶおかしくなったらしい。尾崎行雄は年甲斐もなく亢奮して、日本・・・ 宮本百合子 「長寿恥あり」
・・・彼は、サン・シモンの今日から見れば空想的な社会主義を勉強した急進的学生として、特にロシア民族の発達のために農奴制廃止を熱心に主張した一人であった。 一八四二年にゴーゴリが死んだ。その時、ツルゲーネフは極めて自然の感情の発露によってゴーゴ・・・ 宮本百合子 「ツルゲーネフの生きかた」
・・・故郷が恋しい、母サンやお祖母サンガ居ナイカラ僕ツマンナイヤ、とは、幼い藤村の手紙に決して率直に書かれなかったであろう。 藤村が文学の仕事に入った頃、日本の文学はロマンチシズムの潮流に動かされていた。当時の文学傾向がそうであったと云うばか・・・ 宮本百合子 「藤村の文学にうつる自然」
・・・父も工合わるいスエ子と自分フジへ行ってすきやきサンミッシェルの角まで歩いて車 コンコードの美しさ 十時ごろはもう消える夜十一時頃 ホテルモンソーへかえる 十月六日 カーテンから朝日この数日ない。・・・ 宮本百合子 「「道標」創作メモ」
出典:青空文庫