・・・この姿を外にして私達一般人の人生はないのであるのに、それが抹殺されて、何のためにマダム・バタアフライのサクラ・バナやゲイシャや、フジサンのみを卑屈に修飾して提供しなければならないのであろうか。人民戦線が勝利して以来、フランス出版物の輸入をき・・・ 宮本百合子 「日本の秋色」
・・・それだのに、日本においても他の資本主義国においても人間関係方面での実験とその成果とは、それが二百年も三百年もたって古びてしまわないうちは、平静にうけ入れ研究してみようとはされないのは何故だろうか。サン・シモンという名をきいても顔をこわばらせ・・・ 宮本百合子 「「人間関係方面の成果」」
・・・ ジャン・ジャック・ルソーを嘲弄し、サン・シモンをせせら笑う。何ものも信じない。幻滅を通った七月革命後のフランスの堕落とバルザック。こういう彼が現代において「秩序ある社会を希望する人々」としてカトリーヌをあげている。 そういう社会を・・・ 宮本百合子 「バルザックについてのノート」
・・・しかしそのガラス戸は、全然日本風の引き戸で、勾欄の外側へちょうど雨戸のように繰り出すことになっていたから、冬はこの廊下がサン・ルームのようになったであろう。漱石の作品にある『硝子戸の中』はそういう仕掛けのものであった。そこで廊下から西洋風の・・・ 和辻哲郎 「漱石の人物」
出典:青空文庫