・・・ が、方頷粗髯の山本権兵衛然たる魁偉の状貌は文人を青瓢箪の生白けた柔弱男のシノニムのように思う人たちをして意外の感あらしめた。二葉亭の歿後知人は皆申合わしたように二葉亭の風がいわゆる小説家型でなかった初対面の意外な印象を語っておる。その・・・ 内田魯庵 「二葉亭余談」
・・・多忙のシノニム。 僕も、ちょっぴり泣いた事がある。「毎日、たいへんですね。」「ええ、疲れますわ。」 こう来なくちゃ嘘だ。「でも、いまは民主革命の絶好のチャンスですからね。」「ええ、そう。チャンスです。」「いまをは・・・ 太宰治 「渡り鳥」
・・・甚だしきは、かつてニイチェズムの名が、本能主義や享楽主義のシノニムとして流行した。それからしてジャーナリスト等は、三角関係の恋愛や情死者等を揶揄してニイチェストと呼んだ。 何故にニイチェは、かくも甚だしく日本で理解されないだらうか。前に・・・ 萩原朔太郎 「ニイチェに就いての雑感」
出典:青空文庫