・・・歳月がたつと、一代の想出も次第に薄れて行ったが、しかし折れた針の先のように嫉妬の想いだけは不思議に寺田の胸をチクチクと刺し、毎年春と秋競馬のシーズンが来ると、傷口がうずくようだった。競馬をする人間がすべて一代に関係があったように思われて、こ・・・ 織田作之助 「競馬」
・・・しかし日本も東京辺では四月末から五月初めへかけて色々な花が一と通り咲いてしまって次の季節の花のシーズンに移るまでの間にちょっとした中休みの期間があるような気がする。少なくも自分の家の植物界ではそういうことになっているようである。 四月も・・・ 寺田寅彦 「五月の唯物観」
・・・そうなったら自分も一つやってみようかなどとこのようなたわいもない夢のような事を思うのもやはり美術シーズンの空気に酔わされた影響かもしれない。 勝手なことを書いて礼を失したところが多いと思う。しかし私の悪口は絵に対しての悪口である。名前を・・・ 寺田寅彦 「昭和二年の二科会と美術院」
・・・ わが国でも毎年四五月ごろは山火事のシーズンである。同じ一日じゅうに全国各地数十か所でほとんど同時に山火事を発することもそう珍しくはない。そういう時はたいていきまって著しい不連続線が日本海を縦断して次第に本州に迫って来る際であって同時に・・・ 寺田寅彦 「函館の大火について」
・・・Inland Sea districts, the foehn-winds etc. His exhaustive investigations on the origin of the rainy season, "Baiu," is a・・・ 寺田寅彦 「PROFESSOR TAKEMATU OKADA」
・・・今年のシーズンにチェホフの作は一つも上演されなかった。或る人は、いつか「叔父ワーニャ」を、芸術座で演る筈だと云う。或る人は、いやそれはしないが、桜の園は確定したそうだと云う。私共は何時、何処で、チェホフの何が観られるものか、全然知ることがで・・・ 宮本百合子 「シナーニ書店のベンチ」
・・・ 不良への警告 真面目な親と娘たちにとって毎年のぞましからぬシーズンのおくりものがある。それは不良青年に対する警告である。けれども息子たちの母は同じ意味で不良な娘への警告もよみとっているのではなかろうか。不良な・・・ 宮本百合子 「女性週評」
・・・そして、シーズンを秋から春の終りまでで切らず一年中芝居をやろうという計画などがある。 五ヵ年計画の影響は、だが、そういう経営法の変更に現れるばかりじゃない。ソヴェト一般演劇の実質を変えた。五ヵ年計画の実施はソヴェト市民の全生活を変えた・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの芝居」
・・・そうしてシーズンが来て――秋から翌年春までのそのシーズンに、どこの劇場ではどれだけの上演目録をどういう順序でやって行くということをそこで決定し、脚本の選択をしてやって行く。労働者及び勤め人、そういうものは自分達の職業組合を通じて切符を半額で・・・ 宮本百合子 「ソヴェト・ロシアの素顔」
・・・バルザックがヴェニスやハンガリー、ポーランドやロシアなどで熱烈に愛読され、社交界の貴婦人、紳士がバルザックの作品に現れた人物の名を名乗ってその役割りに扮そうという言いあわせをして或るシーズンはランジェー公夫人だのラスティニャクが社交界に現れ・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
出典:青空文庫