・・・新宅には三階に寝る妹とカーロー君とジャック君とアーネスト君である。カーロー君とジャック君は犬の名であってアーネスト君はここの主人の店に使っている若き人間の名である。我輩の敬服しかつ辟易するベッジパードンは解雇されてしまった。我輩は移転後にこ・・・ 夏目漱石 「倫敦消息」
・・・ロンドンの東と西にある階級のちがい、生活のちがいが、同じイギリス人とよばれる人々の人生をはっきり二分していて、まったく別のものにしている現実をまざまざと目撃して、わたしは深いショックをうけた。ジャック・ロンドンが「奈落の人々」というルポルタ・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第八巻)」
・・・からはじまるこの長篇小説の主人公はジャックという少年である。「灰色のノート」では、宗教学校の偽善的な教育にあき足りない激しい性質のジャックの苦悩と、彼に対する周囲の誤解のみにくさが描かれている。「一九一四年夏」は、一昨年「チボー家の人々」第・・・ 宮本百合子 「生きつつある自意識」
・・・改造文庫で出ているジャック・ロンドンの「野生の呼声」や「ホワイト・ファング」は犬や狼を描いた文学作品の出色のものであるし、キプリングの「ジャングル・ブック」もなかなか豊かな動物と人間の絵巻をひろげている。ハドソンの「ラプラタの博物学者」は、・・・ 宮本百合子 「科学の常識のため」
・・・いらないところをどうすてるかということは――君、ジャック・ロンドンを読んだかい?」「読みません」「ぜひ読んで勉強したまえ! われわれは、われわれの前にいい仕事をして行った者の技術は一遍検査しておく必要があるよ」 手をあげて、一人・・・ 宮本百合子 「「鎌と鎚」工場の文学研究会」
・・・の訳とドーデエの「ジャック」を入れます。「白い牙」は昔枯川の訳があったが、お読みになりましたろうか。しかし心持のよいものだからもう一度でもよいでしょう。ヴォルフの写真集はお手に入りましたか。ヴォルフが細君などの入ったものをとり、集団の美を把・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・が訳されており、その主人公のジャックの一時期の境遇を描いた「灰色の手帖」「少年園」は一般につよい感銘を与えている。マリイ・オゥドゥウの「孤児マリイ」は何とまざまざと女の子のための孤児院の生活感情を語っているだろう。「格子なき牢獄」という映画・・・ 宮本百合子 「ジャンの物語」
・・・或は、エコル・ノルマルの入学試験成績発表日のジャックの落付きない心持の描きかたは第二巻「少年園」での作者とちがって、当時流行していた精神分析の手法を思い出させるなど。この篇で、デュ・ガールはあっちへひっぱられ、こっちへひっぱられそうになりな・・・ 宮本百合子 「人生の共感」
・・・における善意ある緊密さに、統一をもって滲み出しており、その面でも「贋金つくり」と対比的であると感じられる。心をとらえて真面目にする力はそこから湧いていると思われる。「少年園」におけるジャックの苦悩の描きかたは感銘的で、人間の或る耐えがたき瞬・・・ 宮本百合子 「次が待たれるおくりもの」
・・・現代作家としてはゴーリキイが第一を占め、外国作家ではジャック・ロンドンが最も多く読まれていることが示されていた。そのゴーリキイの作品の中でも「母」が第一位を占めていたのは意味深い印象を与えた。「母」は知られている通り、ロシアの民衆の歴史にと・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイによって描かれた婦人」
出典:青空文庫