・・・フランス中流の、誠実で人間らしい人々は、第一次大戦前後の劇しい歴史の摩擦相剋のうちに、どのように生き、破滅し、成長して行ったのだろうか。ジャックという名は、きょうのわたしたちを深くひきつける。日本資本主義独得のひねくれ、欺瞞と粗野、卑屈のジ・・・ 宮本百合子 「脈々として」
・・・そこで無視され、卑俗な大人の通念で誤解されたジャックの能動的な精神の発芽が、やがて封じこめられた「少年園」第二巻で経験する苦しみと危機との描写は、現代においても若い精神が教育とか陶冶とかいう名の下に蒙らなければならない戦慄的な桎梏と虚脱とを・・・ 宮本百合子 「若き精神の成長を描く文学」
・・・外国の作家で一番愛読されていたのはジャック・ロンドンであったと思うが、ロシアの古典作家ではトルストイ、現代作家ではゴーリキイが最高であった。 ゴーリキイが困難な生活の間からこの人生に対してさまざまな深い印象をうけ、どうしてもそれを語りた・・・ 宮本百合子 「私の会ったゴーリキイ」
出典:青空文庫