・・・何とジャーナリスティックな、かんのいい「無」でしょう。田辺哲学の読者は、この資本主義社会に発生した東洋的な「無」の哲学が、われにもあらず権力と商業主義に流され、このように「無」の流転する姿を、哲学の破綻そのものの姿としてみているでしょうか。・・・ 宮本百合子 「新しい抵抗について」
・・・小松清氏というフランスにいたことのある人がホン訳したので、まだ二三頁をよんだにすぎませんがジャーナリスティックなものだし、又エキゾチシズムがつよい。フランスでエレンブルグが書いたものを思いおこさせました。私のバルザックについてかきたいところ・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・目前の生活の必要に追われず、一定の教養もある若い令嬢の仕事として翻訳はいいと思うけれども、それはジャーナリスティックなものに追われず、同時に文学作品ならその作品の世界の純一さに対する訳者としての敬意を失わないものでなければならないと思う。生・・・ 宮本百合子 「『この心の誇り』」
・・・ こう話すと大へん抽象的な答えであって、少し冗談をいえば、私に生れつきもうちょっと気のきいたジャーナリスティックな答を思いつく気質のないようなところが重荷の一つであるようなものですが、考えてみるとなかなか面白いと思う。つまり私のように重・・・ 宮本百合子 「女流作家多難」
・・・『郷土』創刊号の編輯は『関西文学』とは違ったジャーナリスティックな性質において都会的である。が、雑文「瓦職仁儀」や創作「養蚕地帯の秋」などは、地方の生産、それとの関係においての人々を描き、興味があった。文学のひろびろとした発展のために無・・・ 宮本百合子 「新年号の『文学評論』その他」
二ヵ月ばかり前の或る日、神田の大書店の新刊書台のあたりを歩いていたら、ふと「学生の生態」という本が眼に映った。おや、生態ばやりで、こんなジャーナリスティックな模倣があらわれていると半ば苦笑の心持もあってその本を手にとってみ・・・ 宮本百合子 「生態の流行」
・・・これらの流行は文学の範囲をこえた影響をおこしていて、哲学者といわれる田辺元博士まできわめてジャーナリスティックな扱いで実存主義にふれるような傾向をよびおこしました。 坂口安吾の文学は、毎月彼と関係のあるジャーナリストを呼んで大盤振舞いを・・・ 宮本百合子 「一九四七・八年の文壇」
・・・しかし、非常に大きい割合で、ジャーナリスティックにカムバックしただけの作家が目立ちます。 その理由の一つは、ブルジョア・ジャーナリズムの「商売」の必要ということです。一定の紙面をふさぎ、よませなければならないのに読ませるものがない。新登・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
・・・そしてファシズムと闘う文学活動について考える場合、いきなりぱっとジャーナリスティックな敏感さでフランスのレジスタンスの作家たちというような飛躍をするだけでなく、本当に闘う者の腰のすわりで階級的通信活動という形の小さいしかし機能の大きいものに・・・ 宮本百合子 「平和運動と文学者」
出典:青空文庫