・・・諸君は、小説家やジャーナリストの筆先に迷って徒らに帝都の美に憧れてはならない。われわれの国の固有の伝統と文明とは、東京よりも却って諸君の郷土に於て発見される。東京にあるものは、根柢の浅い外来の文化と、たかだか三百年来の江戸趣味の残滓に過ぎな・・・ 織田作之助 「東京文壇に与う」
一 学窓への愛と恋愛 学生はひとつの志を立てて、学びの道にいそしんでいるものである。まず青雲を望み見るこころと、学窓への愛がその衷になければならぬ。近時ジャーナリストの喧声はややもすれば学園を軽んじるかに見・・・ 倉田百三 「学生と生活」
・・・それは世のジャーナリストたちに屡々好評を以て迎えられ、動きのないこと、その努力、それについては不感症では無かろうかと思われる程、盲目である。 重ねて言う。井伏さんは旅の名人である。目立たない旅をする。旅の服装も、お粗末である。 いつ・・・ 太宰治 「『井伏鱒二選集』後記」
・・・自分は、ジャーナリストである。ジャーナリストは、人に革命やら破壊やらをそそのかして置きながら、いつも自分はするりとそこから逃げて汗などを拭いている。実に奇怪な生き物である。現代の悪魔である。自分はその自己嫌悪に堪えかねて、みずから、革命家の・・・ 太宰治 「おさん」
・・・彼の会話の断片を基にしたジャーナリストの評論や、またそれの下手な受売りにどれだけの信用が措けるかは疑問である。ただ煙の上がる処に火があるというあまりあてにならない非科学的法則を頼みにして、少しばかりの材料をここに紹介する。 彼の人間に対・・・ 寺田寅彦 「アインシュタイン」
・・・ある人の話ではジャーナリストらしい。自身の序文にもそうらしく見える事が書いてある。いずれにしても著述家として多少認められ、相当な学識もあり、科学に対してもかなりな理解を有っている人である事は、この書の内容からも了解する事が出来る。 この・・・ 寺田寅彦 「アインシュタインの教育観」
・・・ 以上にあげたような一流の科学者のほかにたとえばフラマリオンやフルニエー・ダルベのような科学の普及や宣伝に貢献したよい意味でのジャーナリストもあるが、しかしそういうものは純粋の科学者から見ると、どうしても肝心のところに物足りないところの・・・ 寺田寅彦 「科学と文学」
・・・などと、武張ったどこかの国のジャーナリストなら書きたい所であろう。それを「平和化」と云ったところはやはりフランス人である。 こんなことを考えてから間もなくのことである。ある有名な日本の歴史家がその著書の中に「朝鮮征伐」という文字を使った・・・ 寺田寅彦 「雑記帳より(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・そういう出版物を経営し、またその原稿を書いて衣食の料として生活している人がジャーナリストであり、そういう人の仕事がすなわちジャーナリズムだとある。手近な字引きで引いたところではたったこれだけの意味しか書いてないのである。しかしきょうこのごろ・・・ 寺田寅彦 「ジャーナリズム雑感」
・・・特にそれが科学者としての体験を持たないほんとうのジャーナリストの手によって行なわれる場合にはなおさらの考えものである。 こういう皮相的科学教育が普及した結果として、あらゆる化け物どもは箱根はもちろん日本の国境から追放された。・・・ 寺田寅彦 「化け物の進化」
出典:青空文庫