・・・もっともロミオとジュリエットは窓から……」 と、言いかけて、白崎は赧くなっている女の顔を見て、おやっと思った。その美しさにびっくりしたのではない。いや、はにかんで眼を伏せると、長い睫毛が濡れたように瞼にかぶさって、まるで眠っているように・・・ 織田作之助 「昨日・今日・明日」
・・・in die Psychoanalyse.Kollontai : A great love.Tolstoi : Anna Karenina.Shakespeare : Romeo and Juliet.Maeterlinck・・・ 倉田百三 「学生と生活」
・・・マクベス夫人のようにおそろしい女から、リア王の三人娘のような諸性格、ロミオとの悲しい愛に命をおとしたジュリエットのような姫から、「ウインザアの陽気な女房たち」「奸婦ならし」の闊達おてんばな女、ハムレットの不幸な愛人としてのオフェリアなど、千・・・ 宮本百合子 「女性の歴史」
・・・「ロミオとジュリエット」にしろ、「パオロとフランチェスカ」の物語にしろ、スタンダールの「カストロの尼」にしろ。近代キリスト教は、その資本主義社会のモラルとして恋愛と結婚の純潔を主張した。家庭の純潔をもとめた。相手に対して貞潔であること――精・・・ 宮本百合子 「貞操について」
・・・「ロミオとジュリエット」で、ジュリエット姫は、どんなに哀憐にロミオ! ロミオ! とよび、夜の露台で有名な独白を月、星、夜鶯にかけて訴えたろう。しかし、ジュリエットが現実に出来たことは死ぬことしかなかった。デスデモーナが、まばゆいほど白くて美・・・ 宮本百合子 「デスデモーナのハンカチーフ」
・・・ヨーロッパでも家門の名誉ということを、その財産の問題とからめて極端に重大に視る習慣のあったスペインやローマの貴族の間でどんなに悲劇があったかということは、「ローミオとジュリエット」一つを見てもよくわかる。スタンダールが書いている「カストロの・・・ 宮本百合子 「人間の結婚」
出典:青空文庫