・・・いろいろ問答をしてそこに出陳されている切り花を点検した結果、たぶんそれはローヤル・スカーレットと称する品種であるらしいというくらいのところまではやっとこぎつけることができた。 こんな些細な知識を求めるのでも容易なことではない。いやむしろ・・・ 寺田寅彦 「錯覚数題」
・・・柱作りに適するローヤル・スカーレットという薔薇がある。濃紅色の花を群生させるが、少しはなれた所から見ると臙脂色の団塊の周囲に紫色の雰囲気のようなものが揺曳しかげろうているように見える。 人間の色彩といったようなものにもやはりこうした二種・・・ 寺田寅彦 「雑記帳より(2[#「2」はローマ数字、1-13-22])」
・・・の明るさと同時に異様な主体性の没却を示している。 そして、巨大な現象をつかみながら、作家の主体的角度が消失しているという点こそ、アメリカ現代文学の無気味な点ではなかろうか。「風と共に去りぬ」のスカーレット・オハラの強烈な性格と生活力にか・・・ 宮本百合子 「心に疼く欲求がある」
・・・のジョアン・マズーとの間にどれだけ大きなヨーロッパの資本主義社会全体の変化が語られているかということを理解し、スカーレット・オハラの強い性格が南北戦争の波瀾を通じて精力的に日々の生活ととっくみながら、いわゆる逞しく生きとおされながら、その窮・・・ 宮本百合子 「文学と生活」
出典:青空文庫