・・・ もし『現代文学論』に何かの物足りなさを感じる読者があるとすれば、その理由の一つには、昨今、評論と随想との区別がごちゃごちゃになって多くの評論家は現実評価のよりどころを失ったとともに自分の身ぶり、スタイル、ものの云いまわしというようなと・・・ 宮本百合子 「作家に語りかける言葉」
・・・が「全く戦時型スタイル」であることを中心にしたものだった。梅崎春生氏がその作品をよまないで推薦したことについての自己批判も同じ日の文化欄に発表された。このことについて梅崎氏は、他の二三のところでも責任を明らかにしたが、同じく「軍艦大和」を「・・・ 宮本百合子 「作家は戦争挑発とたたかう」
・・・ アメリカの最新型のスタイル・ブックが紹介されて、そこには見事なイヴニング・ドレスが華やかな裾を拡げて示されていました。また日本の平面的な顔ではとても冠りこなすことの出来ない、風変りな大帽子などの新型も示されていました。それらが、わたく・・・ 宮本百合子 「自覚について」
・・・ パリにいた或る日、父は私をつれてどこであったか裏町の骨董店歩きをして、私にいろんな家具のスタイルだとかを話してくれたことがありました。ある店で、柿右衛門を模倣した小さい白粉壺が見つかり、父が、しきりに外国で日本の作品が模倣されている面・・・ 宮本百合子 「写真に添えて」
・・・小林秀雄の文芸批評が、当時から一般読者に迎えられるようになったのは、それが時代と文学の在りようを解明する力を持っていたからではなくて、その力を失った所謂知性の時代的なスタイルそのものが共感をもたれたことが最大の原因である。 この評論家と・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・ 一九三〇年頃のヴェラ・インベルは洗煉された一人のソヴェトの女詩人で、未来派出身らしいスタイルを持った才女であった。 彼女の作品は気が利いていた。フランスの匂いがした。けれども率直にいってそれ以上の何ものであったろうか。今次大戦が始・・・ 宮本百合子 「新世界の富」
・・・小説の普通の真面目な読者は、その感想にスタイルこそ整えていないが、常にここへ自然な読後感をもってゆくのである。 伊藤氏が健全な人間的作家としての野望を抱く現代青年の心的事実の代弁者であるならば、小樽の街上を袂を翼に舞ったり下ったりする戯・・・ 宮本百合子 「数言の補足」
・・・『スタイル』という婦人のモード雑誌の新年号にアンケートがある。ラヴ・レターをお書きになったことがお有りですか。すましていてすべってころんだときは、どういうポーズと表現をしますか。あなたのお顔の色々の道具の中で何が一番お好きですか。云々という・・・ 宮本百合子 「戦争はわたしたちからすべてを奪う」
・・・ 日本服だと、着こなしが云われて、その人としてのスタイルというところまでなかなか表現されていないことも、私たちに女の生活の一般化された平面さを考えさせる。年頃の娘さん、令嬢、奥さん、そういう概括はあるけれども、どんな娘さんというその人と・・・ 宮本百合子 「働くために」
・・・にふれたからではなくて、山本氏が氏としての誠意と研究とをもってこの社会に対している真実さが、読者とこの作者とを繋いでいるからである。スタイルだけのことではない。 作家も民衆の一人として、知らしむべからず風な境遇におかれていることにつ・・・ 宮本百合子 「文学における今日の日本的なるもの」
出典:青空文庫