・・・ 第一にその一編の主題となるべきものからいわゆるストーリーあるいはシュジェーが定められる。これはたとえば数行のものであってもよいがともかくも内容のだいたいの筋書きができるのである。それをもう少し具体的な脚本すなわちシナリオに発展させる。・・・ 寺田寅彦 「映画芸術」
・・・ この映画の頂点はヒロインが舞台で衣裳をかなぐり捨てブロンドのかつらを叩きつけて煩わしい虚偽の世界から自由な真実の天地に躍り出す場面であって、その前のすべてのストーリーはこの頂点へ導くための設計であるように見える。一九〇九年型の女優が一・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(5[#「5」はローマ数字、1-13-25])」
・・・これはもちろん二つの間のストーリーの根本的の差違によることであり、また一方では劇的分子、一方では音楽的分子が主要なものになっているためもあるが、しかしまた二人の監督の手法の些細な点まで行き渡った違いによることも明白である。侯爵家の家従がパッ・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・ この映画の編集ぶりは少ししまりがないようである。同じような場面の繰り返しが多すぎて倦怠を招く箇所が少なくない。 この映画のストーリーの原作では、たしか、最後に忠犬が猛獣を倒して自分もその場で命をおとすようなことになっているかと思う・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(3[#「3」はローマ数字、1-13-23])」
一 影なき男 一種の探偵映画である。しかしこの映画のおもしろみはストーリーの猟奇的な探偵趣味よりもむしろウィリアム・パウェルという男とマーナ・ロイという女とこの二人の俳優の特異なパーソナリティの組み合わせと、その二人で代表された・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(※[#ローマ数字7、1-13-27])」
・・・の意味からいうと、本筋のストーリーよりもあのおおぜいの女学生の集団の中に現われる若いドイツ女性のケックハイト、デルブハイトといったようなものの描写の中に若干の真実の表現があるようで、見方によってはむしろそのほうに興味を引かれ同時にいろいろの・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(2[#「2」はローマ数字、1-13-22])」
・・・が通っており、数行のレジュメで要約されるストーリーをもっている場合が多い。これに反して、中間的随筆は概してはっきりした「筋」をもたない場合が多い。しかし、この差別も実はそれほどはっきりしたものではなくて、創作欄にあるものでも、ほとんど内容的・・・ 寺田寅彦 「科学と文学」
・・・ 自分のここで映画的連句というのは一定のストーリーに基づいたシナリオ的な連句のつもりである。しかしシナリオ的な叙事詩とはだいぶちがうつもりである。一方では季題や去り嫌いや打ち越しなどに関する連句的制約をある程度まで導入して進行の沈滞を防・・・ 寺田寅彦 「俳諧瑣談」
・・・ 映画としてのこの絵巻のストーリーは、猿蟹合戦より忠臣蔵に至るあらゆる仇打ち物語に典型的な型式を具えている。はじめは仇打ち事件の素因への道行であり、次に第一のクライマックスの殺し場がある。その次に復讐への径路があって第二の頂点仇打ちの場・・・ 寺田寅彦 「山中常盤双紙」
出典:青空文庫