・・・たとえば友だちの名をかたってパリへ出かけるいたずら者が、自分の引き立て役に純ドイツ型の椋鳥を連れて行く、その椋鳥のタイプとか、パリ遊覧自動車の運転手とか案内者とか、ベデカと首っ引きで、シャンゼリゼーをシャンセライズと発音する英国老人とかいう・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(2[#「2」はローマ数字、1-13-22])」
・・・もわれらのような旧時代のものにはどうもあまり好感の持てないタイプである。しかし、とにかくこうした映画で日常教育されている日本現代の青年男女の趣味好尚は次第に変遷して行って結局われわれの想像できないような方向に推移するに相違ない。考えてみると・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(4[#「4」はローマ数字、1-13-24])」
・・・われわれの日常生活において日常交渉のあるさまざまな人間の生きたタイプを映出することができないものであろうか。現在ではただ与えられたいわゆるスターの生地とマンネリズムとを前提として脚色はあとから生まれるから、スター崇拝者は喜ぶであろうが、でき・・・ 寺田寅彦 「映画時代」
・・・ それは疑問としてもその上にまだ山川風土でありとあらゆる多様のタイプを具備している。実際千島カラフトの果てから台湾の果てまで数えれば、気候でもまず文化民の生活に適する限り一通りはそろっている。こういう珍しい千代紙式に多様な模様を染め付け・・・ 寺田寅彦 「カメラをさげて」
・・・ タイピストの一九二九年のレコードは一分に九十六語でこれはフランスの某タイプ嬢の所有となっている。これなども神経のはたらきの可能性に関するものである。 ロスアンゼルスのアゼリン嬢は三十六秒間に八平方メートルの面積をきれいに掃除したと・・・ 寺田寅彦 「記録狂時代」
・・・ ボーアのごときはむしろこの第二のタイプの学者であるように思われる。従って世間からうるさく取りすがられ駆使される事なしに、そっとして構わないでおいてもらう事に最大の幸福を感ずるたちの人ではなかろうかと想像される。こういう型の学者があると・・・ 寺田寅彦 「雑記(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・を聞くことによって、各地の潮汐のタイプをある度まで分類することができるかもしれない。あるいはまたこの方法によって、調和分析などにはかからない潮汐異常や、地方的固有振動を発見することもできるかもしれない。 またたとえばひと月じゅうの気圧の・・・ 寺田寅彦 「試験管」
・・・しかしもしや宝永安政タイプの大規模地震が主要の大都市を一なでになぎ倒す日が来たらわれらの愛する日本の国はどうなるか。小春の日光はおそらくこれほどうららかには国土蒼生を照らさないであろう。軍縮国防で十に対する六か七かが大問題であったのに、地震・・・ 寺田寅彦 「時事雑感」
・・・するとその人を先ず土台にしてタイプに仕上げる。勿論、その人の個性はあるが、それは捨てて了って、その人を純化してタイプにして行くと、タイプはノーションじゃなくて、具体的のものだから、それ、最初の目的が達せられるという訳だ。この意味からだと『浮・・・ 二葉亭四迷 「予が半生の懺悔」
・・・四五年以上も経過してから、日本において、一つの急進的な性関係のタイプとして、イデオロギー的にコロンタイズムが流布したのには、またそれだけの社会的必然があったと思われる。 いわゆる、マルクス・ボーイ、エンゲルス・ガールという名ができたほど・・・ 宮本百合子 「新しい一夫一婦」
出典:青空文庫