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・・・残った二、三羽の小鳥は一番いのチャボにかえられて、真白なチャボは黄なカナリヤにかわって、彼の籠を占領して居る。しかるに残酷なる病の神は、それさえも憎むと見えて、朝々一番鶏二番鶏とうたい出す彼の声は、夜もねられずに病牀に煩悶して居る予の頭をい・・・
正岡子規
「病牀苦語」
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・・・「好えチャボや。」と安次は呟いて鶏の群れを眺めていた。 お霜は遅れた一羽の鶏を片足で追いつつ大根を抱えて藁小屋の裏から現れた。「また来たんか?」「また厄介になったんや、すまんが頼むぞな。ええチャボやな。こいつなら大分大っきな・・・
横光利一
「南北」