・・・今年は、フント一ルーブルのトマト売が出ている。葡萄売も出ている。高いところでラジオ拡声ラッパが二十一度の明るい北方の夏空へギター合奏を流している。ソヴェト十三年の音と光だ。ずらりと並んだ乳母車のなかでは、いる、いる! それ等の音と光に向って・・・ 宮本百合子 「子供・子供・子供のモスクワ」
・・・夏は卵のかわりにトマトをたべます。 昼はごく簡単な日本食をとります。 夜は六七時頃、三度のうちでは一ばん御馳走のある食卓にむかいます。 嗜好 わたくしは支那料理が非常に好きです。日本料理も西洋料理も、お・・・ 宮本百合子 「身辺打明けの記」
・・・ウラジーミル大公の食堂に今日一皿二十カペイキのサラダがトマトと胡瓜の色鮮やかに並び、シベリアの奥で苔の採集を仕事としている背中の丸い白い髯の小学者が妻と木彫のテーブルについているのを眺めることは絶対に不愉快でありえない、しかし、ゴーリキー自・・・ 宮本百合子 「スモーリヌイに翻る赤旗」
・・・ やがてそろそろ朝日に暑気が加って肌に感じられる時刻になると、白いルバーシカ、白い丸帽子やハンティングが現れ、若い娘たちの派手な色のスカートも翻って、胡瓜の青さ、トマトの赤さ、西瓜のゆたかな山が到るところで目について来る。 ロシヤの・・・ 宮本百合子 「モスクワ」
出典:青空文庫