・・・テーブルがあって、上に冷えたトーストが一片皿にのって置かれている。誰か私より前に訪ねて来た者と話しながら食べた残りであろうか。ゴーリキイのように全大衆から歓迎をされている客の前からも、一片の白パンのトーストの残りをそこに残していることは如何・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイによって描かれた婦人」
・・・斜向いのところに丸テーブルがあって、その上にはもうさめ切った一片のトーストが皿にのったまま忘られたように置かれている。 私は細い赤縞の服を着てそのテーブルに向い、わきに立って私の上にかがみかかっている友達に、時々綴りを訊きながら、本の扉・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・斜向いのところに丸テーブルがあって、その上には、もうさめ切った一片のトーストが皿に入ってのっている。私が細い赤縞の服を着てそのテーブルに向い、わきに立って私の上にかがみかかっている友達に、時々綴りを訊きながら、本の扉にロシア語を下手な字で書・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの発展の特質」
・・・そこへ食べのこしたのか、まだ食べないのか一切れのトーストがぽつんと皿にのって置かれている。 息子と入れちがいにゴーリキイが入って来た。かわいた、大きい温い心持よい手である。低いソフト・カラアにネクタイを結び、茶っぽい毛糸のスウェータァの・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの人及び芸術」
・・・窓の二つあるさっぱりしたその室内には何も特別なものがなく、ただ私より先にきた誰かと話しながら食べて、そのままそこに忘れられているようなトーストが一ときれ皿にのってそこのテーブルにある、それが印象にのこった。 隣りの部屋から息子と一緒にゴ・・・ 宮本百合子 「私の会ったゴーリキイ」
出典:青空文庫