・・・僕は好ましくなかったが、仕事のあいまに教えてやるのも面白いと思って、会話の目録を作らして、そのうちを少しずつと、二人がほかで習って来るナショナル読本の一と二とを読まして見ることにした。お君さんとその弟の正ちゃんとが毎日午後時間を定めて習いに・・・ 岩野泡鳴 「耽溺」
・・・ 中学校で教わったナショナルリーダーの「マッチ売りの娘」の幻覚のように、大きなクリスマストリーが、神秘的に光り輝く霧の中に高く浮かみ上がる。あらゆる過去へのあこがれと、未来への希望とがその樅の小枝の節々につるされた色さまざまの飾り物の中・・・ 寺田寅彦 「銀座アルプス」
・・・ 子供の時分にナショナルリーダーを教わったときに生れてはじめて雪橇というものの名を聞き覚え、その絵を見て、限りなき好奇心と異国の冬への憧憬を喚び起こされたのであったが、その実物をこの眼に見、その鈴の音を耳にしたのは実にこの夜が初めてであ・・・ 寺田寅彦 「追憶の冬夜」
・・・especially in connection with the agricultural problem of the rice crop, a matter of most important national concern in ・・・ 寺田寅彦 「PROFESSOR TAKEMATU OKADA」
・・・ 読者諸君も、中学へあがられると、たぶん教わると思うが、ナショナルリーダーの三に「マンキィ、ブリッジ」という課がある。手の長い猿共が山から山へ、森から森へ遊びあるいて、ある豁川にくると、何十匹の猿が手をつないで樹の枝からブラ下り、だんだ・・・ 徳永直 「こんにゃく売り」
・・・教科書は米国の『ナショナル・リーダー』であった。中学校に進んで、一、二年の間はその頃新に文部省で編纂した英語読本が用いられていたが書名は今覚えていない。この読本は英国人の教師が生徒の発音を正しくするために用いたので、訳読には日本人の教師が別・・・ 永井荷風 「十六、七のころ」
出典:青空文庫