・・・「このような検察当局の行為は、かつてナチスのヒットラーがやったことと何ら変らない。これに対してわれわれは死をとして徹底的に闘う。否、日本の民主主義を愛する人はみんな徹底的に闘うだろう。民主主義の潮流に逆行する現在のファッショ的存在は、全世界・・・ 宮本百合子 「それに偽りがないならば」
・・・そこへこの舞台にとって最もふさわしい野心と賢さと狂気とをもったヒットラーというオーストリアの軍曹がナチスという政党をひきいて現れた。地方的な小政党であったナチスを一九三三年の選挙で第一党にした背後の力は、国内では軍需生産企業の親玉たちと保守・・・ 宮本百合子 「それらの国々でも」
・・・インテリゲンツィアがナチスの独裁へ反抗を示すことは、とりも直さず日本のなかで益々独裁を強化して来た絶対主義体制への抗議を意味したのであった。こうして、人民戦線の提唱のとき、もう近代の民主的主張をひっこめて、非政治的に、非社会的にそれを提案し・・・ 宮本百合子 「誰のために」
・・・その上、野蛮な権勢を守るための言論封鎖の特徴として、そういう人権蹂躙が行われているという事実にふれて語ることさえ、犯罪行為として罰した。ナチスのドイツが同じこと、あるいは、もっとひどいことをした。第二次大戦の結果は、言論を封鎖し、出版統制を・・・ 宮本百合子 「地球はまわる」
ナチスの暴虐に対して国際的な抗議がまき起っているのは当然であると思います。ドイツのナチスを云々する以前、現在われわれの身辺に京大の瀧川教授の問題があり、過去の文化の精華を最も正しく摂取しようとするマルクシストのみならず、ひ・・・ 宮本百合子 「ナチスの暴虐への抗議に関して」
・・・そのものが地上にふかく舞い下りて、地の塩とならないにしても、その刺戟から更に新鮮な機運がわき出て、一九三三年ごろエリカ・マンがナチス政権のもとで組織していた「ペッパーミル」に似た演劇団が生れるかもしれない、そういうところへまで思いをはせれば・・・ 宮本百合子 「人間性・政治・文学(1)」
・・・前年九月ワルソーに突入したナチス軍は四〇年の春ノルウェーに進出し、五月マジノ線を突破して一ヵ月の後フランスを降伏させていた。第二次ヨーロッパ大戦は次第にクライマックスに向いはじめた。日本の天皇制権力とその軍閥は目前のドイツファシズムの勝利に・・・ 宮本百合子 「年譜」
・・・ 近頃一方に制服ばやりがあると共に、他方では極端な服装の単一化が考えられているけれども、先頃ナチスのヒットラー・ユーゲントが来たとき、割にその近くで接触していた人の話では、ユーゲントたちは制服は一通りだけれども、服装としては六七通りはそ・・・ 宮本百合子 「働くために」
・・・今日、ヨーロッパ地図の上で、人間の理性の地図の上で、ナチス侵入に総反撃を加えつつあるブルターニュのマーキの人々の活躍の価値を思い合わせて。 木菟党は、大革命時代に王党の残党としてブルターニュに活躍した農民軍であった。バルザックは、デュマ・・・ 宮本百合子 「バルザックについてのノート」
・・・ファシズムのイタリーが、どうしてレオナルド・ダ・ヴィンチやダンテなどばかりを担いだのでしょう。ナチス・ドイツが、なぜゲーテばかりをあのように担いだのでしょう。そして、軍閥封建の日本で、どうして「源氏物語」ばかり世界に押出し、紫式部以後の日本・・・ 宮本百合子 「婦人の創造力」
出典:青空文庫