・・・それに、もし胃腸がうけつけたら鉄とカルシューム補給のため、バタと鰯、鮭の類、カン油なども是非あがった方がよい。私はいろいろ考えてね。あなたの胃腸のわるい原因がやっぱり胃腸から吸収されるものによって癒されるしかないことを思い、まことに隔靴掻痒・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・無価値をはっきりと見抜き、歴史の変化する真の動機は一人や二人の政治家の女あらそいなどにかかわらず、もっと別なところ、即ちフランスの場合ではドイツに対する伝統的な対立にかかわらず、又ゲーリングの「大砲はバタよりもずっと重要だ」という一九三六年・・・ 宮本百合子 「今日の生活と文化の問題」
・・・ 日本ではまさか女ばかりでそんなことも出来ますまいが、罐詰にバタその他必要な程度のものの入った小さなバスケット一つに、折畳みの簡単なベッドに毛布これだけで自分が望む土地への避暑ができるのですから頗る手軽で愉快な方法です。海辺はどうも日本・・・ 宮本百合子 「女学生だけの天幕生活」
・・・のしいか、かみ昆布、人造バタの妙なのなどと組合わされた一円なにがしの箱の真中に、桃色ベルトのキャラメルが一箇はさまっている。それ一つ欲しいばっかりに、病人の注文であるからこそ、妹は涙をふるってまるでいらないものの入ったその箱ぐるみ一個のキャ・・・ 宮本百合子 「諸物転身の抄」
・・・工場労働者でも、農民でも、スターリンだっても、朝はフーフーふくぐらい熱い紅茶にパンにバタをくっつけたのぐらいで、勤めに出てしまう。 昼十二時に、あっちでは朝飯というのをやる。一寸した腹ふさぎだ。卵をくったり、罐詰をくったり、牛乳またはチ・・・ 宮本百合子 「ソヴェト労働者の解放された生活」
・・・ 食物に我を忘れて居た鶏共は、不意に敵の来襲をうけてどうする余地もなく、けたたましい叫びと共にバタバタと高い暗い鳥屋に逃げ上ろうとひしめき合う。あまりの羽音に「きも」を奪われたのか、犬はその後には目もくれずにじめじめした土間を嗅ぎ廻る。・・・ 宮本百合子 「農村」
・・・炭の合理的な使いようは日々のこととして男にとっても必須になって来ているし、この頃は男は月給袋だけ家へもってかえればいいのでなくて、卵とか干うどんとかバタとか、そんな男の買いものもふえてきているのである。 家のことは女まかせ、という旧い生・・・ 宮本百合子 「働く婦人」
・・・パン焼が麦粉、卵、バタ、出来上ったパンなどを盗まないように注意するのが今やゴーリキイの仕事となった。 パン焼職人は、勿論、盗んだ。仕事の最初の夜に卵を十箇、三斤ばかりの麦粉とかなり大きいバタの塊とを別にして置いた。「これは――何にす・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
出典:青空文庫