・・・ おしゃれな田島は、一昨年の冬、ふらりとこの美容室に立ち寄って、パーマネントをしてもらった事がある。そこの「先生」は、青木さんといって三十歳前後の、いわゆる戦争未亡人である。ひっかけるなどというのではなく、むしろ女のほうから田島について・・・ 太宰治 「グッド・バイ」
・・・男はすべていがぐり、女のパーマネントは打倒。そして私たちは戦争に追いたてられ、今日のギセイとなっている。 ブルジョア民主主義の進んだ国ではそれぞれの人が自分の能力とこのみに従って、どんななりをしようとも、好きなものを着て個性を発揮してい・・・ 宮本百合子 「衣服と婦人の生活」
・・・おしゃれについて、どう考えますか。パーマネントの問題でやかましいですが、美しくしていた方が、気持がいいと思いますけれど。 私だって自分なりのおしゃれは矢張り好きですし、女の人がほんとに自分が好きでしているおしゃれの中に、・・・ 宮本百合子 「女性の生活態度」
・・・例えばパーマネントのことについてのように。 目白の女子大学には、まだ成瀬校長が存命であって、私が英文予科の一年に入ったときは、ゴチックまがいの講堂で一人一人前へ出て画帳のようなものへ毛筆で何か文句を書かされたりした。私は大変本気な顔つき・・・ 宮本百合子 「青春」
・・・流行に押しながされる女の姿は、パーマネントばかりにはなく、制服好きとなっても現れるのである。 当途のない気持をまぎらしに人のよっているところへひきよせられてゆく。その心理が映画館や喫茶店から○○会へ場所を変えたというだけであったら、格別・・・ 宮本百合子 「身についた可能の発見」
・・・ パーマネントの問題は一度おこって消えて、最近では女がそんな髪をしてはならないことにきまった。女の便利不便利ということからではなくて、それを見る男の人々の感情へのはばかりが理由となっている。女とすれば、いやな気持をさせたいとは思わないか・・・ 宮本百合子 「列のこころ」
・・・ 小田急の電車の中で、パーマネントの若い女の髪をつかんで罵りながら引っぱっている男を、ぐるりから止めることもできないような雰囲気で、実にこわかったということをもきいた。 日本がずっとまだ未開だったころは、男は自分の女房をなぐって何が・・・ 宮本百合子 「私の感想」
出典:青空文庫