・・・ 目醒めて来たとは、ブラボー! 何と目醒めた爺さんであることよ。私は思わず破顔しその予想もしない斬新な表現で一層照された二人の学生の近代人的神経質さにも微笑した。然し――私は堅い三等のベンチの上で揺られながら考えた。この四角い帽子をいた・・・ 宮本百合子 「北へ行く」
・・・ 日本女は、その、麻の仕事着をきた若い婦人党員をさそって廊下へ出た。 ――あのひとたち、一日何時間ずつ課業があるんです? ――四時間から、日によっては六時間です。 ブラブラ明るい階段の方へ向って歩きながら、答えた。 ――・・・ 宮本百合子 「スモーリヌイに翻る赤旗」
・・・ そして、朝から晩まで肩にすがったり、手にブラ下ったりしながら、海のむこーに在ると云うまるでお話の様な国の話に聞きほれて居たので、朝からお昼まで学校のかたい机に向って居るために彼と分れなければならないと云う事は実に此上ない悲しい辛い事で・・・ 宮本百合子 「追憶」
・・・ こんな事を考えながら小一時間もうき立った、この上もないうれしい気持でおどる様な足つきでブラついた。私の目にうつるすべてのもののそばにある木々の葉ずれも、空にある雲の走るのもみんなが私と同じたのしい歌をうたい、おどった足つきで居て、・・・ 宮本百合子 「日記」
・・・此間だも――と村校友達となぐり合を始めて相手に鼻血を出させたが、元はと云えばブランコの順番からで夜まで家へ帰されなかったと話して聞かせた。「御免なして下さりませ、ほんに物の分らん児だちゅうたら。「かまいやしないよ、子供の・・・ 宮本百合子 「農村」
・・・この蜜についても、若し私がハイメッタスやハイブラをちっとも知らなかったら、自分にとって何だろう、と云って居る。蝙蝠が夕暮とぶのを見る面白さも、闇夜の道に梟の鳴くのを聞く満足も、皆彼等が詩の世界に現れるものだからだ、と。 私は自らギッシン・・・ 宮本百合子 「無題(四)」
出典:青空文庫