・・・とにかく自分の現在の生活が都合よくはこびうるならば、ブルジョアのために、気焔も吐こうし、プロレタリアのために、提灯も持とうという種類の人である。そしてその人の芸術は、当代でいえば、その人をプティ・ブルジョアにでも仕上げてくれれば、それで目的・・・ 有島武郎 「広津氏に答う」
・・・認め、そしてその動向は永年にわたる生活と習慣とが馴致したもので、両階級の間には、生活様式の上にも、それから醸される思想の上にも、容易に融通しがたい懸隔のあることを感じ、現在においてはそれがブルジョアとプロレタリアの二階級において顕著に現われ・・・ 有島武郎 「片信」
・・・ 恰も、今日の都会居住の作家によって描かれつゝある、所謂都会芸術は、その名称に於てこそ、心理描写と言い、或は感覚の芸術であると言われるけれど、真の階級意識を有せざる点に於て、プロレタリアの芸術と言うことができないと同じであります。 ・・・ 小川未明 「街を行くまゝに感ず」
・・・ その時、プロレタリア文学のことに話が及ぶと、T君は、いまどきプロレタリア文学などといったら、馬鹿か、気ちがいだと思われるよと笑い出してしまった。すくなくとも肚の底では考えていても、口に出していうものはないとのことである。 常に労働・・・ 黒島伝治 「田舎から東京を見る」
・・・ 対岸には、搾取のない生産と、新しい社会主義社会の建設と、労働者が、自分たちのための労働を、行いうる地球上たった一つのプロレタリアートの国があった。赤い布で髪をしばった若い女が、男のような活溌な足どりで歩いている。ポチカレオへ赤い貨車が・・・ 黒島伝治 「国境」
・・・ 一体、プロレタリア作家は、誰でも人を殺したり、手や足をもぎ取ることが好きである。彼も、その一人である。まるで、人を殺さなければ小説が出来ないものゝように、百姓も殺せば、子供も殺す。パルチザンでも、朝鮮人でも、日本人でも、誰でも、かれで・・・ 黒島伝治 「自画像」
・・・しかし、革命的プロレタリアートに対しては、徹底的に弾圧の手をゆるめやしないのだ。 なお、そればかりではない。第三期に這入って帝国主義戦争が間近かに切迫して来るに従って、ブルジョアジーは入営する兵士たちに対してばかりでなく、全国民を、青年・・・ 黒島伝治 「入営する青年たちは何をなすべきか」
農民文学に対する、プロレタリア文学運動の陣営内における関心は、最近、次第にたかまってきている。日本プロレタリア作家同盟では、農民文学に対する特殊な研究会が持たれた。ハリコフでの国際革命作家拡大プレナムの決議は日本のプロレタ・・・ 黒島伝治 「農民文学の問題」
・・・ 戦争反対の文学は、かなり昔から存在して居るが、ブルジョアジーの戦争反対文学と、現代プロレタリアートの戦争反対文学とは、原則的に異ったものを持っている。戦争反対の意図を以て書かれたものは、古代ヘブライの予言者マイカのものゝ中にもある。民・・・ 黒島伝治 「反戦文学論」
・・・社会関係の矛盾も、資本主義が発展した段階に於て遂行する戦争とプロレタリアートとの利害の相剋も、すべてが戦線に出された兵卒に反映し凝集する。それは加熱された水のようなものである。蒸気に転化する可能性を持っている。だから、兵卒に着目したことには・・・ 黒島伝治 「明治の戦争文学」
出典:青空文庫