・・・このけものかね、これはボスといってね、おいおい、そこつるはしはよしたまえ。ていねいに鑿でやってくれたまえ。ボスといってね、いまの牛の先祖で、昔はたくさん居たさ。」「標本にするんですか。」「いや、証明するに要るんだ。ぼくらからみると、・・・ 宮沢賢治 「銀河鉄道の夜」
・・・その負担にたまらなくなった美術ボスたちがあれこれ細工をしているうちに、いつかは国外に消えてゆく率も多くなる。わたしたち人民は、自分たちの文化財として「国宝」をもっているのではない実状を自覚すべきである。一旦「国宝」にしたら、もう官僚機構の腐・・・ 宮本百合子 「国宝」
・・・いま公判がひらかれている吉村隊長が、外蒙の日本人捕虜収容所のボスとして行った残虐と背徳行為が社会問題化したのは、「暁に祈る」という怪奇なテーマをもつ記録文学がいくとおりか発表され、輿論の注目をひいたためであった。現地の軍当局の信じられないほ・・・ 宮本百合子 「ことの真実」
・・・文学上のボスになりやすい。 ゾシチェンコやアフマートヴァが、それなら、どうしてソヴェト市民の一部に好かれたのだろう。ちょうど第一次五ヵ年計画のはじまる前後、一九二〇年代の後半、私がモスクワにいた時分、エセーニンの詩が一部に愛好されていた・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・日本は半封建の社会で婦人の活動場面が非常に狭いから、婦人団体といえばその狭いなかで、互にぶつかりあったり、そのぶつかりを既成勢力に利用されて結局、婦人ボスのあらそいとなったりしてきた。婦人民主クラブは、少くとも人間として社会に生きようとする・・・ 宮本百合子 「その人の四年間」
各地方の文化・文学運動がこれまで経験したむずかしさの中で一番主なものは、ほんとに若い人々の自主的な活動として成長しにくく、何かのことでその地方の文化ボス、文学ボスのまわりに吸いよせられてしまうことではないでしょうか。九州で・・・ 宮本百合子 「地方文化・文学運動にのぞむもの」
・・・同じグループの児玉誉士夫というのは児玉機関といわれた特務機関のような一種のファシズムのボスですが、彼は或る種の右翼的な作家、名前をいうことを止めますが、そういう作家達と近い関係にあったという話があります。 すべてのこういう事情はこんにち・・・ 宮本百合子 「平和運動と文学者」
・・・ 六・三制のためには、子をもつ親のすべてがひどい思いをして、町にも村にもボスがはびこる有様だが、こんどは六・三制のための予算は丸けずりとなった。その上学童の知能は低下したからと、文部省はこの新学期に、四学年用のものをのぞいて数学の教科書・・・ 宮本百合子 「平和をわれらに」
・・・私立大のスポーツ・ボスが従来どんなにチームをくって来たか。そのために選手たちのスポーツマン・シップは危機にさらされがちであること、及び、各大学の運動部は、その学校の精神水準としては、社会的認識についても素朴な低い面を代表しがちな傾向について・・・ 宮本百合子 「ボン・ボヤージ!」
・・・それほど学界のボスの現象が顕著であり、そういうボスに接近する青年たちは、当時の流行語でいえば、シュトレーバーだと見られた。その後三、四十年の歴史が実証したところによると、そういう青年の感じ方は必ずしも間違ってはいなかったといえる。だから先生・・・ 和辻哲郎 「露伴先生の思い出」
出典:青空文庫