・・・ 旧軽井沢の町はユニークな見ものである。ちょっと見ると維新以前の宿場のような感じのする矮小な低い家並みの店先には、いわゆる「居留地」向きの雑貨のほかに、一九三三年の東京の銀座にあると同じような新しいものもあるのである。書店の棚にはギリシ・・・ 寺田寅彦 「軽井沢」
・・・そうしてまた、あれだけ大勢があれだけ多数の大刀を振廻わして、そうして誰も怪我をしないようにするという芸術はおそらく世界にユニークなものであろう。そう思って見ているとあれは実に面白い見ものである。全く感嘆に値いするものである。 土佐の田舎・・・ 寺田寅彦 「雑記帳より(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・それでこの規定はもちろん絶対ユニークなものではないまでも種々な可能なものの中から選ばるべき最良なるものの一つであることだけは確実であろうと思われる。 以上ははなはだ未熟な分析の試みであったが、このような見方を一つの作業仮説として実際の古・・・ 寺田寅彦 「連句雑俎」
・・・評伝は十二月初旬小説が終ってから再びつづけて、前半のように緻密にして生活的であり、生活と芸術とその歴史性の掘下げでユニークなものを完結します。小説もそのように生活のディテールと活力の横溢したものにしたいと思います。「乳房」を書いているから、・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・北緯四十*度から**度の間に弦に張られた島 日本が、敏感に西からの風、東からの風に震え反応しつつ、猶断然ユニークなソーユ○人間がこの世に生きる人としての価値は、その人にどんなことでも――恐ろしいこと、けたはずれなことでも話せるかどう・・・ 宮本百合子 「一九二九年一月――二月」
・・・鏡花は完全に化けぬいた。ユニークな天才と化け得て一九二五年の文壇に生彩を放って居るから。 これについて当時の批評と云うものについて感あり。所謂一流の人々の批評にも、どんな危険性が含まれて居るかということについて。鏡花、よくも化け抜い・・・ 宮本百合子 「無題(五)」
出典:青空文庫