・・・南方風な瞼のきれ工合に特徴があるばかりでなく、その眼の動き、眼光が、ひとくちに云えば極めて精悍であるが、この人の男らしいユーモアが何かの折、その眼の中に愛嬌となって閃めくとき、内奥にある温かさの全幅が実に真率に表現される。それに、熱中して物・・・ 宮本百合子 「熱き茶色」
・・・母ジェニファーの新しい愛人、そして良人として現われたコルベット卿をやっている俳優が、英国風の紳士というものを何か勘ちがいして、英国名物のチャンバーレン、蝙蝠傘は忘れずその手に持参しているばかり、到ってユーモアも男らしい複雑な味もなく一番つま・・・ 宮本百合子 「雨の昼」
・・・ いわゆるユーモア文学の作家にはゾーシチェンコなどという人もいる。これは、古いロシアと新しいソヴェト生活のむじゅんから生ずる滑稽を、毒のない笑話という程度でまとめる。自己批判というキッとしたところのある笑いではない。 こう書いて来て・・・ 宮本百合子 「新たなプロレタリア文学」
・・・で見物がドッと笑うソヴェト農村ユーモアは悲しやいたって少からず解らない、と。 実際の闘争において農村ピオニェールの任務は非常に大きい。「憤怒」では、ソヴェト演劇においてこれまでほとんどつかわれなかった子役の形でピオニェールを出し、ご・・・ 宮本百合子 「インターナショナルとともに」
・・・ 三巻の映画を眺めて行くうちに、もっとユーモアを! もっと天然な子供らしさを! と切実な要求がたかまって来るのであった。文化映画は、皮相な意味の文化性から脱して、もっともっと真剣に現実に迫らなければならない。文化性というものも語をかえて・・・ 宮本百合子 「映画の語る現実」
・・・アメリカその他の映画が、たとえば恋愛を扱うにしろ、社会の非合理から生じた悲劇を悲劇のまま描いたものか、さもなければナンセンス、ユーモアに韜晦しているもの足りなさを、今日のソヴェト映画は、どのような内容と技術の新生面を開いているだろうか。小説・・・ 宮本百合子 「映画の恋愛」
・・・の世界のユーモアを「上からの笑い」だと表現している。「上からの笑い」の真意は、勝利者が上から敗北者にあびせかけた笑いであるというよりは、現実社会の腐敗や停滞、偽瞞を裏まで見とおしている社会生活への鋭い洞察者が、その明るくてかげのない実践的な・・・ 宮本百合子 「音楽の民族性と諷刺」
・・・それは綺麗だったけれど、そのあとから制服の背中に黄色い布で長い木剣を斜に背負って自転車にのった娘さんの一隊がきかかると、立ち止って見ていた通行人たちはびっくりした心持からユーモアへ動かされて、みんな笑い出したそうだ。あんな恰好をして遠いとこ・・・ 宮本百合子 「女の行進」
・・・最後までよいユーモアを失わず、みなの気を引立てるために冗談をいって笑いまでしたイエニーは、最後の意識が失われようとする時カールに向って云った。「カール、私の力は砕けました。」彼女の眼はいつもより大きく美しく輝いていた。口がきけなくなった時イ・・・ 宮本百合子 「カール・マルクスとその夫人」
・・・山田清三郎が獄中からよこす歌には何とも云えぬ素直さ、鍛えられた土台の上に安々としている或るユーモアの境地があり、作品に独特なおもむきを与えているではありませんか。 ところで、この『集団行進』をよんでも思うことは、時事問題を芸術として扱う・・・ 宮本百合子 「歌集『集団行進』に寄せて」
出典:青空文庫