これは十年ほど前から単身都落ちして、或る片田舎に定住している老詩人が、所謂日本ルネサンスのとき到って脚光を浴び、その地方の教育会の招聘を受け、男女同権と題して試みたところの不思議な講演の速記録である。 ――もは・・・ 太宰治 「男女同権」
・・・彼の人及び芸術家としての壮大な歓び、悲しみ、辛苦、不撓な芸術への献身などは、ルネサンスの花咲きみちた十五世紀の伊太利、その自由都市国家フィレンツェの人民の繁栄及び近代的進歩の挫折の過程と、たちがたい関係をもって互につながり合っているものであ・・・ 宮本百合子 「現代の心をこめて」
・・・ 人間精神の美と客観的真実とはディフォーメイションであるだろうか。ルネサンスにディフォーメイションがあったろうか。鋳型にはめたような中世の肖像画からレオナルドの生きた人間がおどり出した。ディフォーメイションは大づかみにいえばそのものとし・・・ 宮本百合子 「ディフォーメイションへの疑問」
・・・我々は第二の Renaissance を期待する。新しい価値、自由にして剛健な内よりの道徳、個性の尊重、真の意味の実行、享楽の卑下、より高い者を実現するための誠実なる悩苦の生活。世紀末から世紀始めへかけて五六の偉人がその礎石を置いた。キェル・・・ 和辻哲郎 「「ゼエレン・キェルケゴオル」序」
出典:青空文庫