・・・ 一八 やがて井筒屋へ行くと、吉弥とお貞と主人とか囲炉裡を取り巻いて坐っている。お君や正ちゃんは何も知らずに寝ているらしい。主人はどういう風になるだろうと心配していた様子、吉弥は存外平気でいる。お貞はまず口を切った。・・・ 岩野泡鳴 「耽溺」
・・・――明治四四、五、一八―二〇『東京朝日新聞』―― 夏目漱石 「文芸委員は何をするか」
・・・一九二五、五、一八、汽車は闇のなかをどんどん北へ走って行く。盛岡の上のそらがまだぼうっと明るく濁って見える。黒い藪だの松林だのぐんぐん窓を通って行く。北上山地の上のへりが時々かすかに見える。さあいよいよぼくらも岩手県・・・ 宮沢賢治 「或る農学生の日誌」
・・・ 幼年時代 マクシム・ゴーリキイは、一八六八年三月二十八日、ロシアでは最も古くから発達した中部商業都市の一つであるニージニ・ノヴゴロド市に生れた。本名は、アレクセイ・マクシモヴィッチ・ペシコフと云った。父親はマ・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
出典:青空文庫