・・・「清衡朝臣の奉供、一切経のうちであります――時価で申しますとな、唯この一巻でも一万円以上であります。」 橘南谿の東遊記に、これは清衡存生の時、自在坊蓮光といへる僧に命じ、一切経書写の事を司らしむ。三千日が間、能書の僧数百人を・・・ 泉鏡花 「七宝の柱」
・・・ それ故に仏の遺言を信じるならば、専ら法華経を明鏡として、一切経の心を知るべきである。したがって法華経の文を開き奉れば、「此法華経ハ於テ二諸経ノ中ニ一最モ在リ二其上ニ一」とある。 また涅槃経に、「依ッテレ法ニ不レレ依ラレ人ニ」とある・・・ 倉田百三 「学生と先哲」
・・・の故に比叡山で一切経をみたびも閲読したのである。 書物は星の数ほどある。しかしかような「問い」をもってたち向かうとき、これに適切に答え得る書物はそれほど多いものではないのである。むしろそのはなはだ少ないのに意外の感を持つであろう。 ・・・ 倉田百三 「学生と読書」
出典:青空文庫