・・・そういうものを一括して、スパイと思わせた。道理に立つ足場が弱かったから、それだけ人間の理性の明るさを恐怖した。ある婦人雑誌などはその一頁ごとに、洋鬼を殺せ、とおそろしい文字を刷った雑誌を、おとなしい家庭的な日本の妻たちの手もとにおくったので・・・ 宮本百合子 「世界の寡婦」
・・・今日新しく民主主義社会への展望とともに自身の文化建設の課題として文学をとりあげはじめた人々には、三つを順ぐりよんでいっても一括してまとまった判断をうけとりにくく、文学の美しさで鼓舞されるという感動もうけられなかったろうと思います。小田切さん・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
・・・をその線へ一括することは無理だし、小市民作家を、もと同伴者作家と見たように「吸収し、手をつなぐ」ものとしてみることにも無理がある。それぞれのもちものを生かして、その上での前進を、共通の重点をとおして見てゆくという複雑さをおそれない方法がとら・・・ 宮本百合子 「その柵は必要か」
・・・ 文学青年と一括して呼ばれる若い時代の社会的・経済的支持の力は、彼等の苦しく逼迫する現実生活の必然から、従来の所謂文壇人の生活を負担しがたくなって来ている。このことは、文芸家協会の納金低下にも現れ、修飾のない実際問題として一部の作家のダ・・・ 宮本百合子 「文学における今日の日本的なるもの」
・・・フランス風というと、その一言が多くの内容を一括して或る感じを与え得る。ところが日本というところは、過去においては余り東洋の幻想の中につつみこまれていた。蝶々夫人、お菊さん、小泉八雲の描くところの日本。それらはいずれも昔の日本の或る一面、或は・・・ 宮本百合子 「「迷いの末は」」
・・・ 木村は為事が一つ片附いたので、その一括の書類を机の向うに押し遣って、高い山からまた一括の書類を卸した。初のは半紙の罫紙であったが、こん度のは紫板の西洋紙である。手の平にべたりと食っ附く。丁度物干竿と一しょに蛞蝓を掴んだような心持である・・・ 森鴎外 「あそび」
出典:青空文庫