・・・廃刀令が出たからと云って、一揆を起すような連中は、自滅する方が当然だと思っている。』と、至極冷淡な返事をしますと、彼は不服そうに首を振って、『それは彼等の主張は間違っていたかもしれない。しかし彼等がその主張に殉じた態度は、同情以上に価すると・・・ 芥川竜之介 「開化の良人」
・・・ 羽織、袴、白襟、紋着、迎いの人数がずらりと並ぶ、礼服を着た一揆を思え。 時に、継母の取った手段は、極めて平凡な、しかも最上常識的なものであった。「旦那、この革鞄だけ持って出ますでな。」「いいえ、貴方。」 判然した優しい・・・ 泉鏡花 「革鞄の怪」
・・・各粗末なしかも丈夫そうな洋服を着て、草鞋脚絆で、鉄砲を各手に持って、いろんな帽子をかぶって――どうしても山賊か一揆の夜討ちぐらいにしか見えなかった。 しかし一通りの山賊でない、図太い山賊で、かの字港まで十人が勝手次第にしゃべって、随分や・・・ 国木田独歩 「鹿狩り」
・・・「何でも高くなりやあがる、ありがてえ世界だ、月に百両じゃあ食えねえようになるんでなくッちゃあ面白くねえ。「そりゃあどういう理屈だネ。「一揆がはじまりゃあ占めたもんだ。「下らないことをお言いで無い、そうすりゃあ汝はどうするとい・・・ 幸田露伴 「貧乏」
・・・ドイツでは、その生活の惨めなことで誰しらぬもののなかったシュレジアの織匠が命がけの悲壮な一揆を起した。この一揆は世界の同情をひいた。シュレジアの地主と工場主と軍隊が流した織匠の血は、すべての人々の胸のうちに正義の憤りをもえたたせた。後年、ハ・・・ 宮本百合子 「カール・マルクスとその夫人」
・・・これに反して、新しい人間生活のために暗渠をつくり、灌漑用水を掘り、排水路をつけて、自身の歴史をみのらしてゆこうとする事業は、まったく新しい事業である。一揆、暴動などという悲劇的な正義の爆発の道をとおらずに、人民の全線が抑圧に抵抗しようとする・・・ 宮本百合子 「その柵は必要か」
・・・眠けざましに、イシオピア人の真似でもして天の一揆を工もうか。ヴィンダー あの時結局勝ったのが誰だか忘れるな、矢張レーだ。ミーダ 俺達にでも堪えるべき運命があると云うのか?――ああ、ああ、退屈は明敏な俺の呪咀まで腐らせそうだ!ヴィ・・・ 宮本百合子 「対話」
・・・饑饉が終るとコレラが蔓延し、一揆があちらこちらで起ったが、このとき、怒った大衆の標的とされたのは誰あろう、ともに餓えて疫病と闘った急進的知識人と医者とであった。 このからくりに采配をふるったのは、ツァーの有名な警視総監である大官ポベドノ・・・ 宮本百合子 「冬を越す蕾」
・・・特に高崎郡領一揆と大久保利通にその例を見る維新の封建地主勢力の庇護のもとにあった志士団と革命的農民との敵対関係へ、われわれの注意を向けている点は見落すことのできないことである。 明治維新を「その被圧迫階級の立場から描くことこそマルクス・・・・ 宮本百合子 「文学に関する感想」
・・・感をもたれてる〔欄外に〕 マクシミリアン・ラマルク 1770―1832 はナポレオン帝政時代の名将軍 七月帝政時代にも反対派代議士として有名 コレラで死 葬式が暴動のキッカケとなった ジャンヌ一揆二日間。○ルシアンの性格は英雄主・・・ 宮本百合子 「「緑の騎士」ノート」
出典:青空文庫