一木(いちぼく)
の例文・使い方・用例・文例(12)
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・・・ 今日の深川は西は大川の岸から、東は砂町の境に至るまで、一木一草もない。焼跡の空地に生えた雑草を除けば、目に映ずる青いものは一ツもない。震災後に開かれた一直線の広い道路と、むかしから流れている幾筋の運河とが、際限なき焦土の上に建てられた・・・
永井荷風
「深川の散歩」
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・・・、敗戦の将たちの灯火を受けた胸の流れが、漣のような忙しい白さで着席していく姿と、自分の横の芝生にいま寝そべって、半身を捻じ曲げたまま灯の中をさし覗いている栖方を見比べ、大厦の崩れんとするとき、人皆この一木に頼るばかりであろうかと、あたりの風・・・
横光利一
「微笑」
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