・・・胸はダブルの、金ボタンを七つずつ、きっちり並べて附けました。ボタンの列の終ったところで、きゅっと細く胴を締めて、それから裾が、ぱっとひらいて短く、そこのリズムが至極軽妙を必要とするので、洋服屋に三度も縫い直しを命じました。袖も細めに、袖口に・・・ 太宰治 「おしゃれ童子」
・・・また一日じゅうの時刻については「朝五つ時前、夕七つ時過ぎにはかけられない、多くは日盛りであるという」とある。 またこの出現するのにおのずから場所が定まっている傾向があり、たとえば一里塚のような所の例があげられている。 もう一つ参考に・・・ 寺田寅彦 「怪異考」
・・・たった一部屋限りの食堂は、せいぜい十畳くらいで、そこに並べてある小さな食卓の数も、六つか七つくらいに過ぎなかった。しかし部屋が割合に気持のいい部屋で、すべてが清楚な感じを与えた。のみならず、そこで食わせる料理も、味が軽くて、分量があまり多く・・・ 寺田寅彦 「雑記(2[#「2」はローマ数字、1-13-22])」
・・・「何でも七つばかりある」「そんなにあるかい。何と何だい」「何と何だって、たしかにあるんだよ。第一爪をはがす鑿と、鑿を敲く槌と、それから爪を削る小刀と、爪を刳る妙なものと、それから……」「それから何があるかい」「それから変・・・ 夏目漱石 「二百十日」
・・・ で、中学の存在によって繁栄を引き止めようとしたが、困ったことには中学がその地方十里以内の地域に一度に七つも創立された。 だいたい今まで中学が少な過ぎたために、県で立てたのが二つ、その当時、衆議院議員選挙の猛烈な競争があったが、一人・・・ 葉山嘉樹 「死屍を食う男」
・・・大きな梨ならば六つか七つ、樽柿ならば七つか八つ、蜜柑ならば十五か二十位食うのが常習であった。田舎へ行脚に出掛けた時なども、普通の旅籠の外に酒一本も飲まぬから金はいらぬはずであるが、時々路傍の茶店に休んで、梨や柿をくうのが僻であるから、存外に・・・ 正岡子規 「くだもの」
・・・ それは小岩井農場の南、あのゆるやかな七つ森のいちばん西のはずれの西がわでした。かれ草の中に二本のうずのしゅげが、もうその黒いやわらかな花をつけていました。 まばゆい白い雲が小さな小さなきれになって砕けてみだれて、空をいっぱい東の方・・・ 宮沢賢治 「おきなぐさ」
・・・ 第一話から第五話まで、コフマンは太陽と七つの惑星、そのなかの一つである地球、その地球のまわりの空気などについて語っている。宇宙の偉大さを感じさせるこの部分は、私たちに岩波文庫に出ている「史的に見たる科学的宇宙観の変遷」を思いおこさせる・・・ 宮本百合子 「科学の常識のため」
・・・ 今二つの目の主は七つか八つ位の娘である。無理に上げたようなお煙草盆に、小さい花簪を挿している。 白い手拭を畳んで膝の上に置いて、割箸を割って、手に持って待っているのである。 男が肉を三切四切食った頃に、娘が箸を持った手を伸べて・・・ 森鴎外 「牛鍋」
・・・ne echo gives the halfTo some wight amazed to hearJesting deep in forest drear. 春の一夜、日光の下に七つの星を頂いて森をさすらう時、キーツの・・・ 和辻哲郎 「霊的本能主義」
出典:青空文庫