・・・ 島が生まれるという記事なども、地球物理学的に解釈すると、海底火山の噴出、あるいは地震による海底の隆起によって海中に島が現われあるいは暗礁が露出する現象、あるいはまた河口における三角州の出現などを連想させるものがある。 なかんずく速・・・ 寺田寅彦 「神話と地球物理学」
・・・そのような歴史への働きかけは一見まことに見事らしくないが、しかも大きい河が河の中にやがてそこに都市の建てられる三角州をつくるとき、どの砂粒がその大きい自然の作業に参加するに余り艷の目立たないただの砂粒であることを自身にとって下らないこととし・・・ 宮本百合子 「生活者としての成長」
・・・一匹は真直に来るが、もう一匹の方はつかれたと見えて、三角州のようになって居る彼方にそれてゆく。こんどは人間が流れて来た、三人で皆長髪だ。ああいやだなと人を呼びにゆくところで、目がさめた。 その三人が長髪であったので、さめたあとまでいやな・・・ 宮本百合子 「一九二五年より一九二七年一月まで」
・・・そこは都会の三角州である。ここでは妙に身丈の縮小したように見えるロンドン人が山高帽の波を打たせて右往左往やっている。一つの騎馬像が人間波浪から突立って見えた。英蘭銀行の八本の大円柱がこの三角州の上で堂々と塵をかぶりつつ、翼を拡げている。・・・ 宮本百合子 「ロンドン一九二九年」
出典:青空文庫