・・・と云うのは先生が、まるで羽根を抜かれた鳥のように、絶えず両手を上げ下げしながら、慌しい調子で饒舌った中に、「諸君にはまだ人生はわからない。ね。わかりたいったって、わかりはしません。それだけ諸君は幸福なんでしょう。我々になると、ちゃんと人・・・ 芥川竜之介 「毛利先生」
・・・いとおくびより易い世辞この手とこの手とこう合わせて相生の松ソレと突きやったる出雲殿の代理心得、間、髪を容れざる働きに俊雄君閣下初めて天に昇るを得て小春がその歳暮裾曳く弘め、用度をここに仰ぎたてまつれば上げ下げならぬ大吉が二挺三味線つれてその・・・ 斎藤緑雨 「かくれんぼ」
・・・あの仲間へ這入ってこの腕を上げ下げして、こちとらの手足の中にある力を鉄の上に加えて見たい。あの目の下に見えている頑強な、固い、立派な鉄の上に加えて見たい。なんだってここに立って両手を隠しに入れていなくてはならないのだろう。」 その時どう・・・ 著:シュミットボンウィルヘルム 訳:森鴎外 「鴉」
出典:青空文庫