・・・(僕に白柳秀湖氏や上司それはまだ中学生の僕には僕自身同じことを見ていたせいか、感銘の深いものに違いなかった。僕はこの文章から同氏の本を読むようになり、いつかロシヤの文学者の名前を、――ことにトゥルゲネフの名前を覚えるようになった。それらの小・・・ 芥川竜之介 「追憶」
・・・ たとえば、谷崎潤一郎氏の書く大阪弁、宇野浩二氏の書く大阪弁、上司小剣氏の書く大阪弁、川端康成氏の書く大阪弁、武田麟太郎氏の書く大阪弁、藤沢桓夫氏の書く大阪弁、それから私の書く大阪弁、みな違っている。いちいち例をあげてその相違をあげると・・・ 織田作之助 「大阪の可能性」
・・・だから、傷が癒えると、少尉から上司へいい報告がして貰える。看護卒には、看護卒なりに、そういう自信があった。 彼等は、愉快な、幸福な気分を味わいながら駐屯地へ向って引き上げて行った。 大隊長は、司令部へ騎馬伝令を発して、ユフカに於ける・・・ 黒島伝治 「パルチザン・ウォルコフ」
・・・もちろん之は、ただちに上司にも報告するつもりである。ただいま、その者の名を呼びます。その者は、この五百人の会員全部に聞えるように、はっきりと、大きな声で返辞をしなさい。」 まことに奇特な人もあるものだ、その人は、いったい、どんな環境の人・・・ 太宰治 「鉄面皮」
・・・を、徳田秋声、上司小剣等の作家も久しぶりにそれぞれその人らしい作品を示した。そして当時「ひかげの花」に対して与えられた批評の性質こそ、多くの作家が陥っていた人生的態度並びに文学作品評価についての拠りどころなさ、無気力、焦慮を如実に反映したも・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・ 興味あることには、この時代の旺な脈動が、例えば上司小剣、島崎藤村、或は山本有三、広津和郎等に案外の反映を見出していることである。 明治文学の記念塔である藤村の「夜明け前」が執筆され始めたのは昭和四年、新しい文学の波の最高潮に達した・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・を『中央公論』に連載中の島崎藤村はもちろん、永井荷風、徳田秋声、近松秋江、上司小剣、宮地嘉六などの諸氏が、ジャーナリズムの上に返り咲いたことである。 このことは、ブルジョア文学の動きの上に微妙な影響を与えたばかりでなく「ナルプ」解散後の・・・ 宮本百合子 「一九三四年度におけるブルジョア文学の動向」
・・・却って唐紙に墨で描いたような上司小剣氏の「石合戦」が現われたりしている。これは何故であろうか。或る種の人々はこれまでの作家の怠慢さにその原因を帰するけれども、果してそれだけのことであろうか。社会性は益々濃厚に各方面から各人の上に輻輳して来て・・・ 宮本百合子 「文学の流れ」
出典:青空文庫