・・・チーチーパッパでやって行くが、上級の子は、女の子は大抵の女の子とつれ立ち、男の子は男の子とつれ立っている。ペーヴメントから溢れるほど大勢で威勢よくのして来る一群には、数人の男の子、女の子入れまじりだ。男の子、女の子と一組だけ組んでいる場合は・・・ 宮本百合子 「砂遊場からの同志」
・・・の中であの特徴のある敏感な可愛いナターシャが、当時のロシアの上級階級のいざこざの間に幾つかの恋愛を経験しながら最後はピエールの妻となって、だんだん鈍感になり、ふとり、次から次へと子供を持って歌いもせず考えもしない客間と子供部屋だけの存在とな・・・ 宮本百合子 「人間の結婚」
・・・勤労動員で軍需工場に働かされたすべての男女は、その数千万の眼で、恥も知らないうまいことをしているのはすべて自分たちより上級者でしかないこと、日本を勝たすために、あくまでがんばれと命令している者であることを、はっきり見たのであった。 やが・・・ 宮本百合子 「便乗の図絵」
・・・ と注意した。上級の女の児は、そう云われることを大変きらった。田代先生は髭のついている口を大きくあけて、男のどら声のような声で、しかし音程は正しく「空も港も夜は更けて」というような単純な歌を教えた。 その室のとなりに教員室があり、子供た・・・ 宮本百合子 「藤棚」
・・・生きる方法をくみたてた人の闘いの姿はおそろしいばかりである。上級軍人の妻であったということからうけた特別な苦痛を、筆者は、はげしい実行力で生きぬいた。野蛮だった日本の軍隊組織、がむしゃらだった戦争。満州で土地の人民の生活をこわしたその力のは・・・ 宮本百合子 「「未亡人の手記」選後評」
出典:青空文庫