・・・私の所へ直接にはかけ合わなかったけれども、当時私の下働きをしていた男に取消を申し込んで来ました。それが本人からではないのです。雪嶺さんの子分――子分というと何だか博奕打のようでおかしいが、――まあ同人といったようなものでしょう、どうしても取・・・ 夏目漱石 「私の個人主義」
・・・ 書生と女中とに用を云いつける丈でも平常は引込んでばかり居る彼女には一仕事だったのに、下働きの小女を助けるものがないので午後からは流し場へ立ったっきりでした。 ナイフで大根の皮を剥いたり、揚物をしたり大きな前掛を背中まで掛けて碌に口・・・ 宮本百合子 「二月七日」
・・・主人は少年の彼を女中代り、下男代りにこき使い、おまけに二人の炊事女がこれ又自分達の下働きとして追い廻す。ゴーリキイは後年当時を回想してこう書いている。「私は多く労働した。殆どぼんやりしてしまうまで働いた」と。 この境遇に一年辛抱したが、・・・ 宮本百合子 「逝けるマクシム・ゴーリキイ」
出典:青空文庫